育種学雑誌
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26 巻, 1 号
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  • 雑賀 優, R C, P B
    1976 年 26 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1976/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イタリアンライグラス(2=14)にみられ,トールフェスク(2n=42)にはみられない螢光反応が,イタリアンライグラスとトールフェスクの交雑後代個体(2n=42)に見出された。この個体を自然交雑させて得られた5螢光個体を供試親株とし,自殖第1代,自然交雑第1代・第2代,および親株間の多交配後代の4集団を得た。まず得られた集団の螢光個体割合から,交雑後代における螢光反応の遺伝様式の推定を試みた。その結果,いくつかの親株後代の螢光個体割合は,イタリアンライグラスでみられるような,1対の優性遺伝子が関与する遺伝様式に合致したが,他の親株後代は合致せず,他に変更遺伝子が関与している可能性が考えられる。つぎに,前述の4集団を螢光個体と非螢光個体に分け,試験ほ場に生育させた後,それぞれについて冠銹耐病性と栄養価指数の調査を行った。親株の系統問には冠銃耐病性で有意な差がみられたが,螢光個体群と非螢光個体群との間には,冠銹耐病性,栄養価指数のいずれにおいても有意な差はみられず,螢光反応と冠銹耐病性.あるいは栄養価指数との間に密接な関連は見出せなかった。
  • 今西 茂
    1976 年 26 巻 1 号 p. 6-16
    発行日: 1976/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    米国から導入した一年生多胚の細胞質雄性不稔系統と二年生草胚系統の交雑組合せ後代から,一年生多胚稔性回復系統(P-MM)と一年生草胚稔性回復系統(P-mm)をそれぞれ育成した。両系統を花粉親に用いて,一年生多胚の細胞質雄性不稔系統(TA-2-MS)と一年生単胚の細胞質雄性不稔系統(TA-1-MS)との間で,TA-2-MS×P-mmとTA-1-MSXP-MMたる交雑を行ない,F1とF2世代を準備した。胚数性と雄性不稔の2形質に関するF2世代の分離調査は,花粉親系統とF1世代も加えて,山形大学農学部(鶴岡市)の実験ほ場において1972,1973および1974年の3か年にわたって行なった。本研究においても単胚性の遺伝は,F2世代のF2-MMの分離において単胚個体の出現が期待値よりもやや少ない傾向が認められたものの,劣性単因子遺伝であることが確認された。雄性不稔の表現型分類は5段階法(完全稔性型,半稔性型,半不稔II型,半不稔I型,完全不稔型)でまず行ない,仮説と連鎖のX2検定は稔性型(半稔性型,完全稔性型),半不稔型(半不稔I型,半不稔II型),完全不稔型の3段階法に分類し直してのち行なった。花粉親系統とF1世代で,完全不稔型は全く生じなかったが,半不稔型はかなり出現した。半不稔型の出現には主働遺伝子に作用する変更遺伝子や環境の影響が考えられた。本研究に用いた稔性回復系統における雄性不稔発現の遺伝様式は,0WEN(1950)の仮定したごとく,稔性型はX遺伝子とZ遺伝子の補足作用によって発現し,完全不稔型と半不稔型の発現は2種の主働遺伝子のうちのX遺伝子座によって主として支配され,完全不稔型はX遺伝子座の劣性ホモの状態で発現すると考えられた。さらに,なお雄性不稔の程度は変更遺伝子によっても影響されると推定された。胚数性と雄性不稔の2形質に関与する遺伝子間の連鎖関係については,まず,X遺伝子と胚数遺伝子の連鎖関係は認められなかった。Z遺伝子と胚数遺伝子の連鎖関係については,それらの遺伝子間で交互作用に有意性が認められる場合も存在したが,これは相反の連鎖フェースであるにもかかわらず,あたかも相引のごとき現象を生じたことに帰因していたので,Z遺伝子と胚数遺伝子の連鎖も本研究の材料については存在しないものと推定された。
  • 東 正昭, 櫛淵 欽也
    1976 年 26 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 1976/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    フクニシキ(高蛋白)×フジミノリ(低蛋白)の雑種後代の検定およびフクニシキの高蛋白性に関する系譜的追跡調査結果に基づきフクニシキの高蛋白性の遺伝様式を検討した。F2集団の玄米蛋白含有率は平均値が若干低蛋白親方向に偏るが,その分布は正規分布に似た連続的なものであった。F2分散から求めた蛋白含有率の広義の遺伝力の推定値は0.45となり,F2-F3,F3-F4の親子相関は各々0,551,0,709と比較的高かった。また蛋白含有率と出穂期や草型との間に相関々係が認められ,早生,短稈ほど高蛋白の傾向がみられた。さらにフクニシキの高蛋白性の系譜的調査から,森田早生-農林1号-八ツニシキ-フクニシキと蛋白含有率はさほど低下することなく伝えられてきたことがわかった。これらの品種間でも高蛋白性と出穂期や草型との間に連関があるものとみられた。これらの結果からフクニシキの高蛋白性は相加的に働く複数遺伝子により支配されており,その遺伝力は比較的高く,初期世代での選抜もある程度有効であると思われた。しかし,蛋白含有率と出穂期,草型等との問に連関があり,高蛋白性の個体や系統の選抜にあたってはそれらの特性についても十分配慮したければならないと考えられた。
  • 常脇 恒一郎, 中井 泰男, 藤垣 順三
    1976 年 26 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 1976/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    連続戻し交雑法により日本および米国の33実用品種にTriticum timopheevi細胞質を導入した。ジュンレイコムギ,農林50号,同52号,同69号以外のすべての品種はこの細胞質によって完全ないしほぼ完全な雄性不稔(自殖種子稔性5%以下)に転化した。ユ969年から1975年にかけての京都での観察,および1971年における農事試験場(鴻巣),九州(筑後)・中国(福山)・東北(盛岡)3国立農業試験場,北海道道立農業試験場(北見)での観察の結果,これらの雄性不稔形質の発現は著しく安定したものであることがわかった。上記のジュンレイコムギなど4品種は多くの年次において5%以上の自殖種子稔性を示したことから,弱い稔性回復遺伝子を有しているものと考えられる。ジュンレイコムギ,農林50号,同52号の稔性回復遺伝子はいずれも新中長に由来するものと考えられるが,農林69号の遺伝子は別起原と思われる。雄性不稔系統の放任受粉による着粒率には品種間差異があり,アオバコムギ,Bledsoe,Lemhi 53の3品種は高他殖能,コケシコムギ,フジミコムギ,ミクニコムギ・Idaed 59,Karnvor, White Federationの6品種は低他殖能と考えられる。同一品種の正常系統と雄性不稔系統を隣接して栽植した場合には,低他殖能品種の雄性不稔系統でも50%以上の着粒率を示したので,雄性不稔系統・稔性回復系統を用いたF1種子の大量採取が日本においても容易であることが証明された。
  • 山縣 弘忠, 藤本 光宏, 中川 明
    1976 年 26 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 1976/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    EMS浸漬処理後に種子胚中に残留するEMSの効果ならびにこの効果に対する水洗温度の影響を知るために,水稲品種銀坊主ならびに銀坊主に由来するアルビナヘテロ系統の気乾種子を,種々の温度条件下(0℃~30℃)でEMS溶液(0.8%または0.9%)に浸漬したのち,それぞれ異なる水温条件(10℃~40℃)で水洗を行ない,処理当代における障害,体細胞突然変異出現率ならびに次代における葉緑,出穂日および稈長に関する変異体出現率について水洗温度の効果を検討した。銀坊主種子のEMS処理当代の障害および次代における突然変異出現率は,水洗温度の上昇にともなって急激に増加した。またこのような水洗温度の効果は浸漬処理温度の上昇によっても増大することが認められた。つぎに,アルビナヘテロ系統種子のEMS処理当代植物における体細胞突然変異の出現率についても,上記銀坊主種子処理の場合と同じ水洗温度効果が認められ,とくに葉緑突然変異体出現率とはまったく傾向が一致していた。このことから,突然変異誘起効果の早期判定にはアルビナヘテロ系統の利用が有効と推論された。銀坊主種子,アルビナヘテロ系統種子いずれの場合も,水洗温度の効果は,浸漬処理温度の効果には及ばぬまでもかなり大きいものであり,したがってEMS処理に際しては水洗時における環境要因,とくに温度の制御に十分留意する必要があると考えられる。
  • 大政 正武, 渡辺 好郎, 村田 伸夫
    1976 年 26 巻 1 号 p. 40-50
    発行日: 1976/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    細胞質雄性不稔性の発現とミトコンドリアの関係を調べる目的で,ミトコンドリアに存在する酵素のうちチトクロームオキシターゼ(cyt.oxidase)及びリンゴ酸脱水素酵素(MDH)の活性を,花粉形成時期の葯について測定し,その値を正常細胞質(N細胞質)をもつ系統と不稔細胞質をもつ系統の間で比較した。トウモロコシの材料は,N及び不稔のT,S,または,C細胞質をもつWF9系統を用いた。花粉彩成時期のトウモロコシから雄穂を採集し,その一部を酪酸アルコール混合液で固定して顕微鏡観察により花粉のステージを決定した。雄穂の残りの部分から既知量の葯を採集し,蔗糖溶液中でホモジネートにしたのち,遠沈により,「沈殿分画」,「ミトコンドリア分画」及び「上澄」の3分画に分けた。各分画についてcyt.oxidase及びMDH活性を測定し,それぞれの生体重1g当りの値を求めた。また,雄穂と同時に止葉を採集し,その一部を同様にホモジネートにして酵素活性を測定した。
  • 中川原 捷洋, 秋浜 友也, 岩田 伸夫
    1976 年 26 巻 1 号 p. 51-58
    発行日: 1976/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    先に作出し,分類したイネ三染色体植物は主として質的形質を基準にしたものである。ここでは量的形質の特異的変化を明らかにする目的で,主成分分析を適用し,その「総合特性」から分類の有効性と二染色体植物からの形質変化の様相を検討した。量的形質としては,稈長,穂長,一穂籾数,籾長,籾幅および種子稔実歩合の6形質とした。まず主成分のうち,第1,第2主成分でほとんどの分散が説明できたので,第1,第2主成分を軸として散布図を求めた。単純三染色体植物と二染色体植物は,4つの異なる品種から派生したにもかかわらず,それぞれがかなりまとまった範囲に散布したため,「総合特性」としての量的形質の変化は単純三染色体植物の種類ごとに特異的に起っていることが明らかとなった。つぎに,複三染色体植物とその自殖後代で分離する2種類の単純三染色体と二染色体植物相互の散布範囲を比較した。その結果,複三染色体植物は2種類の単純三染色体植物が示す形質変化を同時に保有する範囲に散布し,いわば2種類の単純三染色体植物の特徴を合成した総合特性を表現した。以上から,つぎのように結論される。1)各単純三染色体植物は二染色体植物とは明らかに区別でき,単純三染色体植物間でもそれぞれの型ごとに比較的一定の特性を示す。2)単純三染色体植物の染色体添加は過剰染色体の種類によって特異的な形態形質の変化をもたらす。3)複数の過剰染色体が添加しても,各過剰染色体の形質変化に及ぼす特異的な影響力は不変であり,しかも相加的である。
  • 鶴 政夫
    1976 年 26 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 1976/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
  • 櫛淵 欽也
    1976 年 26 巻 1 号 p. 62-66
    発行日: 1976/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
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