抄録
H.asper, H.cannabinusおよびH.sabdariffaの種間交雑の結果,H.asper×H.cannabinusでは交雑が成功し,5個体のF1植物を,またH.sabdariffa×H.asperおよびH.sabdariffa×H.cannabinusではいずれも胚珠培養を経て,胚を育成し,さらにこれらを胚培養に移して,それぞれ11個体と4個体のF1植物を,いずれも育成したので,それらの特性を調査した。上記3種類のF1植物の外部形態はいずれも全体としては両親のほぼ中間を示したが,なかには,両親のいずれかに著しく類似した形質もみられた。H.asper, H.cannabinusおよびH.sabdariffaの染色体数はそれぞれ21に36,36および72であった。得られたH.asper×H.cannabinus F1,H.sabdariffa×H.asper F1およびH.sabdariffa×H.cannabinus F1のそれらはそれぞれ2n=36,54および54であった。H.asper×H.cannabinus F1では減数分裂に特に異常は認められず,大部分の細胞で,18IIを示し,花粉稔性も高く,F2種子を得て発芽したが,途中で枯死した。H.sabdariffa×H.asper F1およびH.sabdariffa×H.cannabinus F1ではいずれも,18II+18Iが多くみられ,その他の対合を示す細胞もみられたが,花粉稔性は低く,完全に不稔であった。以上の結果から.H.asperとH.cannabinus は完全には相同ではないが,それに近い相同のゲノムを持つものと推定された。またH.sabdariffaは2つのゲノムより成り,1つはH.asperまたはH.cannabinus と部分相同のゲノムであり,他の1つは,ごく僅か部分的に相同ではあるが,異なったゲノムであると推定された。