育種学雑誌
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27 巻, 3 号
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  • 大橘 雄司
    1977 年27 巻3 号 p. 193-200
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    タバコ属植物63種,85系統のサツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne Incognita)に対する抵抗性を27℃と35℃の土壌恒温槽で幼苗検定した。タバコの対照品級として高度抵抗性のNC95,中程度抵抗性のRK70および罹病性のBY4号を供試した。根に侵入した線虫の発育程度をCHRISTIE(1946)の分類に従って調査Lた結果,タバコ属植物の抵抗性を次の3群に明確に分類できた。1)NC95と同様に,27℃で,根の過敏性反応によって侵入した線虫の発育を完全に阻止する高度低批性群。Nicotiana arentsii No.1およびN,tomentosa N0.3,N0.5が属する。2)RK70と同様に2℃では,侵入した幼虫の80%以上の発育を抑制する中程度抵抗性群。これにはN.knightiana No.1,N.longifiora No.4,Nmegalosiphon No.3,N.miersii No.1,N.nudicaulis N.o1,N.otophora No.1,No.2,N.paniculata No.2,No.3,N.plumbaginifolia No-2,No.3およびN.suaveolens No.2,No.3が属する。3)両温度条件下で,BY4号と同様に線虫の発育早く,他群の種に比べて産卵成虫の割合が極めて高い罹病性群。これには上言己以外の供試した全部の種が属する。高度抵抗性群の2種は,NC95と嗣様に,35.Cの高温下ではその抵抗性の程度が低下し,多数の根こぶと卵嚢が形成された。また,RK70の抵抗性も35.Cでは低下したのに対し,中程度抵抗性群に属する全種の抵抗性は低下せず,RK70よりも安定していた。
  • 石墨 慶一郎
    1977 年27 巻3 号 p. 201-215
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    コシヒカリおよびその姉妹品種の主要特性の由来を明らかにするため,これらの品種の育成過程における主要特性の選抜経過を取りまとめて先に報告した(石墨1976)。一方,これら姉妹品種の育成に関連した品種を純系淘汰によって育成された品種にさかのぼって栽培し,主要特性を調査し,さらに玄米の品質および食味について,官能検査による評価ならびに理化学的な検討を行なった。その結果,過去数10年間にわたる品種改良によって,極長稈から中稈へ,穂重型から穂数型へと重心を低くして倒伏抵抗性を強めるとともに,受光体制を整えることによって穂重歩合が高くなり,収量性を高めてきたことがわかった。さらに,品質は一段とすぐれる方向に改良されているが,食味は基本品種の良食味を伝えているにとどまり,良食味を集積して一段とすぐれた方向に改良されたとは推定し難かった。また,高蛋白性を森田早生から農林1号を経て,ホウネソワセやハツニシキに伝えていることを再確認するとともに,低蛋白性は朝日から農林8号へ,さらに,農林22号を経てコシヒカリに伝えていることが推定された。しかし,低蛋白性と良食味の関係を見出すことはできなかった。
  • 樽本 勲, 井沢 弘一, 渡辺 亀彦
    1977 年27 巻3 号 p. 216-222
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    強×弱の2組合せ(Sorghum-sudangrass雑種)および強X強の2組合せ(Sorghum-sorghum)について,両親F1,F2,また強×弱の1組合せでは戻交配(BC1,BC2)を供試して(Table1・参照),草地試験場の圃場で1973年夏期にソルガムすす紋病抵抗性の遺伝様式を検討した。1973年は平年と比較して著しく降水量が少なく,またやや低温であり,すす紋病試験には不適であった。しかし,井沢,樽本(1973)の検定法を一部改良した圃場検定法を用いることにより,高温,多湿条件下における試験結果(樽本・井沢1975)と同程度の罹病度および罹病葉率を得た(Table1・Fig.1)。強×弱および強×強の組合せのF1はすべて罹病度0.5以下の抵抗性であった。強×強のF2では分離がみられず,抵抗性であった。強X弱のF2では分離がみられ,罹病度1.0以下の個体を抵抗性とする場合の(低抗性:感受性=3:1)の仮説を良く満たし,605A×Sweet SudanのF2でX2=2.689(P≒0.10),390A×GreenleafのF2でX2=0,002(P>0.90)であった。抵抗性親への戻交配BC1では大部分の個体(92.3%)が罹病度1.0以下の抵抗性を示した。一方,罹病性親への戻交配BC2では罹病度1.78を中央値とする正規分布が示され,17.8%の個体だけが抵抗性であった。またBC2では(抵抗性:感受性=1:1)の仮説は満されなかった(X2=37.378,P<0.005)。これはBC2の75%の遺伝子は罹病性親Sweet Sudanに由来していることによる圃場抵抗性の劣化によるものと考察される(Fig.1)。上記のように特にBC2で一部適合したいけれども,F1,F2およびBC1の結果から,ソルガム雑種のすす紋病抵抗性は,抵抗性が優性の1主働遺伝子により本質的には支配されると考えられる。
  • 佐俣 淑彦, 稲津 厚圭, 高橋 賢
    1977 年27 巻3 号 p. 223-236
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    Cosmos caudatus H.B.et K.はBurma地方の野生種で,花器や葉や種子の形態は栽培種のCosmos sulphureus Cav.(キバナコスモス)によく似ているが,花色は後者の持たない明るい桃色をしている。そこで両種間の交種が成功すれば,後代に明るい桃色花をもつキバナコスモス型の新種を育種できる可能性がある。1966年以降,両種間で多数の交雑を試み,5個体の雑種を作ることに成功した。そのうち4個体は完全に不稔であったが,1個体の最下方の枝から15粒の種子が得られた。その後代では多かれ少なかれ稔性のある個体が分離し,現在,F7世代に至っている。雑種F1の花色は赤みがかった燈色であるが,F3およびF5世代で明るい桃色花の個体を分離し,固定することに成功した。しかしこの系統は,草丈,開花期,稔性などの点で多くの難点を持っており,実用種として用いるまでに至っていない。両親と雑種の花弁の表面色を測色色差計を用いて測定したところ,雑種のうち燈色花をもつ個体の大多数の測定値はC.sulphureusの測定値と重なり,一方桃色花をもつ個体の測定値はC.caudatusの測定値に類似していた。それらの花の色素を分析した結果,両親と雑種に共通の2種のアントシアニン(シアニジン-3-ラムノグルコシドとシアニジン-3-グルコシド)が検出された。またC.caudatusおよび桃色花の雑種は,C.sulphureusの持つ黄色色素のカルコンやオウロンを完全に欠除していた。両親と雑種F6の染色体数を調べた結果,C.sulphureus(2n=24)C.caudatus(2n=48)雑種F6(Ccaudatus×C.sulphureus)(2n=52~62)で,これらの結果から,雑種F1で一つの枝だけが稔性を持つようになったのは,複二倍体が成立したためであり,その後代では減数分裂が乱れて体細胞染色体数に変異を生じたものと推察している。
  • M アクバル, 籔野 友三郎
    1977 年27 巻3 号 p. 237-240
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    水稲品種MagnoliaとJhona349をその移植期から収穫期まで連続的に塩処理(濃度4,000ppm)した場合に発'現した不稔性を3つの型に分類した(Akbar et al. 1972)。そのうちの遅発性不稔性についてさらに全穂型と枝梗または小穂型とが区別され,供試2品種は遅発性全穂不稔性について明瞭な品種間差異を示すことが述べられた(Akbar and Yabuno,1975)。塩処理によってMagnoliaの全供試個体は遅発性全穂不稔性を示したが,Jhona349および両品種間の相反交雑によるF1個体は塩処理条件下でも遅発性全穂不稔性を発現しなかった。F1雑種(Magnolia×Jhona349)にMagnoliaを花粉親として戻し交雑した次代および雑種F2世代における正常個体と遅発性全穂不稔個体の分離・出現頻度からこの型の不稔性についての耐塩性は少数(少くとも3つ)の優性の同義遺伝子によって支配されていることが推定され,Jhona349は耐塩性イネ品種育成の素材となりうることが示された。
  • 松林 元一, 三十尾 修司
    1977 年27 巻3 号 p. 241-250
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    メキシコ産バレイショ近縁種のうち,Bulbocastana,CardiophyuaおよびPinnatisecta 3群相互間におけるゲノムの類縁関係を明らかにするため,一各群よりそれぞれ代表的な2倍程(2n=24),S.bulbocastanum(blb),S.sambucinum(smb)およびS.jamesii(jam)を選び,それらのF1雑種における染色体の対合行動と花粉稔性を調べた。さらに各雑種から育成された複2倍体とそれら両親の同質4倍体につき,一多価染色体の形成頻度を比較して,各種間における染色体の微細な構造的差異を検討した。smb×jamのF1雑種は,何れの系統もM-Iで大部分の細胞が規則的に12IIを形成し,90%前後の高い花粉稔性を示した。またsmb×blbのF1雑種では,これに比べて,やや対合量の低下や稀に染色体橋が認められたが,本質的には上記の雑種と変りないようであった。しかるにjam×blbのF1雑種は,前記2つの場合と異なって,系統によって23~51%の細胞が4連あるいはそれから派生した3連染色体を形成し,A-Iでは遅滞染色体や染色体橋がしばしぱみられ,花粉稔性も37~52%という低率であった。これらの事実は,しかし,供試3種の相互間におけるゲノムの相同関係の成立にとって論理的に矛盾する。そこで各雑種から育成された複2倍体の多価対合頻度を,それぞれの両親の同質4倍体のそれと比較して,各ゲノム間に一おげる染色体の`differential affinity'を検討した。その結果smb×blbの複2倍体はsmb×jamの複2倍体とは有意に異なり,jam×blbの複2倍体に近似の値を示すことがわかった。以上の結果から次の見解が導かれる。smbとjamのゲノムは互いに高い相同関係にあるが,blbのゲノムはこれら両種のゲノムと同一カテゴリーに属するとはいえ,それらの染色体の若干には転座や逆位などによる構造的差異が存在する。
  • 菅 洋
    1977 年27 巻3 号 p. 251-256
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    サツマイモの嬢性系統関東48号を用いて、自然日長のことなる時期および制御した日長条件下におけるGA3またはGA7の開花におよぼす影響をしらべた。圃場に挿苗して栽培し繁茂している植物体の先端より,実験時に約15~20cmの苗を切りとり,1/10,000アールのプラスチックポットあるいは28×24×11cmのプラスチック容器に挿苗し完全に活着してから供試した。自然日長条件下の実験ではGA7は開花始期を著しく促進した。GA3は閉花始期はGA7よりおくれたが1個体当りの累積開花数を著しく増加させた。圃場で最後まで生育した個体では全く花苗の着生はみとめられなかったが,上記ポットあるいは容器に挿苗した個体はGA処理しないものでも秋遅くなって着蕾がみとめられ更に温室において保温したものでは開花も認みられた。しかし、初夏から秋にかけて戸外で上記と同サイズのポットに植えて日長を制御して行なった実験では短周下(9時間日長)ではGA7により開花が著しく促進されたが,長日下(20時間日長)では無処理区はもちろん開花しないがGA7処理によっても開花は誘起されなかった。
  • 浜村 邦夫, プラウェート セーングペット
    1977 年27 巻3 号 p. 257-266
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    播種後5~7目の稲苗の株元に4cmの培土を行って節間伸長を起させ,品種間差を観察した。バングラデシュ,タイ,インド,日本の稲品種30のうち,バングラデシュ,インドの浮稲品種は培土処理後に著しい節間伸長を示し,タイ,日本の品種とは画然と異なった。バングラデシュ,インドの浮稲品種は培土を行なわなくても,6葉期あるいはそれ以前の若い時期から節間伸長を開始する。バングラデシュ,インドの浮稲品種は,そのうちの多くが,長芒,赤米など野生稲に近い形質を持つところから見て,より原始的な性質を残した稲と推定される。浮稲品種が非浮稲品種に比べ,より短かい第2葉身を持つ傾向があることも再び留意された。
  • 桑田 晃, 馬淵 敏夫
    1977 年27 巻3 号 p. 267-273
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    H.asper, H.cannabinusおよびH.sabdariffaの種間交雑の結果,H.asper×H.cannabinusでは交雑が成功し,5個体のF1植物を,またH.sabdariffa×H.asperおよびH.sabdariffa×H.cannabinusではいずれも胚珠培養を経て,胚を育成し,さらにこれらを胚培養に移して,それぞれ11個体と4個体のF1植物を,いずれも育成したので,それらの特性を調査した。上記3種類のF1植物の外部形態はいずれも全体としては両親のほぼ中間を示したが,なかには,両親のいずれかに著しく類似した形質もみられた。H.asper, H.cannabinusおよびH.sabdariffaの染色体数はそれぞれ21に36,36および72であった。得られたH.asper×H.cannabinus F1,H.sabdariffa×H.asper F1およびH.sabdariffa×H.cannabinus F1のそれらはそれぞれ2n=36,54および54であった。H.asper×H.cannabinus F1では減数分裂に特に異常は認められず,大部分の細胞で,18IIを示し,花粉稔性も高く,F2種子を得て発芽したが,途中で枯死した。H.sabdariffa×H.asper F1およびH.sabdariffa×H.cannabinus F1ではいずれも,18II+18Iが多くみられ,その他の対合を示す細胞もみられたが,花粉稔性は低く,完全に不稔であった。以上の結果から.H.asperとH.cannabinus は完全には相同ではないが,それに近い相同のゲノムを持つものと推定された。またH.sabdariffaは2つのゲノムより成り,1つはH.asperまたはH.cannabinus と部分相同のゲノムであり,他の1つは,ごく僅か部分的に相同ではあるが,異なったゲノムであると推定された。
  • 櫛淵 欽也
    1977 年27 巻3 号 p. 274-282
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
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