育種学雑誌
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テンサイの根重と糖分の間の負の相関々係に関する育種学的研究 : XI.葉部形質についての選抜の影響
津田 周彌
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1977 年 27 巻 4 号 p. 305-320

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抄録

従来の研究において根重・糖分についての選抜が,後代の1葉身あたりの重量,葉の分化速度に顕著な相関反応をもたらした結果に基礎を置き,これら比較的測定容易な葉部形質を,根重・糖分の向上,あるいは両者の負の相関消去のために利用しうるかどうかを検討した。所謂根重型品種KWS-Eと高糖分の自殖系統S-26の間の交雑後代の検定圃場の各プロットから,1葉身重・生育後期の発生葉数の最大・最小の値を示す個体,根重または糖分の最高の値を示す個体を選抜し;これらを葉部形質の平均値を基準にして4群(LL群-両砂質とも平均値より高い個体群。LS群-1葉身重は高いが,出葉数は低い個体群。SL群-LS群と対蹄的特性を示す個体群。SS群-両形質とも平均値より低い値を示す個体群)に分類した。各群ごとに隔嫌,個体ごとに採種し,これら各群から各年5系統を選び,2年に亘り後代検定を行った。その結果は次のように要約できる。1.1葉あたり面積を表わす1葉身重はSL群が最低で,SS群は比較的高い値を示した。そのため親子相関は一応有意となったが,それから推定される遺伝力は25%程度に過ぎなかった(Tab1e2,3)。2.出葉速度はLL・SL両群において明らかに高い値を示し,親子相関は+0.8~0.9,それから推定される遺伝力は最高82%を示した(Table4,5)。3・根重はLS,SS両群で高く,親子相関は0に等しかった(Table8,9)。4.糖分はLL,SL両群で高かったが,親子相関はやはり0に近かった(Table 10,12)。5.これら根部の形質は出葉速度と有意な親子相関を示し(Table 10,13),出葉速度は測定の容易さとともに,根部形質の選抜効率を高める上の補助形質として有用であると考えられた。6.1葉身重は根部移質に対し有意な親子相関を示さなかった(Table 10,13)が,LS,SL両群だけについて検討してみると,この葉部形質も補助形質として有用であることが推定された。7、従来の研究からLL群の後代は恨重。糖分ともに高い値を示すことが期待されたが,根重の実現値は低く,また一方SS群の後代は両根部形質とも低い値を示すことが期待されたが,根重の実現値はLS群に匹敵した。その原因について少しく考察Lた。8.LSおよびSL両群の各群内で求めた恨重と糖分の相関は負の値を示したが,他群のそれに比してかなり低い値を示した(Table14)が,これは前者では根重,後者では糖分の変異が低くなったためである。またLS群は糖分について有意な親子相関を示し,また出葉速度とは負の親子相関を示した。これらのことは,これら群内での母系系統選抜が,根重と糖分の負の遺伝相関消去に有効であろうことを示唆するとともに,業部形質と根部形質の遺伝相関消去が根部形質の負の関係消去に役立つのではないかとの示唆を与えた。

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