育種学雑誌
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ツバキ属栽培種における細胞学的研究 : II.六倍体種とそれらの雑種
近藤 勝彦
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1977 年 27 巻 4 号 p. 333-344

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抄録

米国ツバキ協会に記録され,栽培されているツバキ属中,六倍体種(2n=90)6種84個体と,それらの種間および品種間雑種中花粉母細胞が得られた8組合せ20個体を供試し,減数分裂における染色体を観察した。他の雑種組合せは幼苗であるか,または弁化が進んで雄ずいのみられないもので,今回供試できなかった。大きな栽培品種群からなるサザンカ(C.sasanqua)とトウツバキ(C.reliculata)およびそれらの雑種として記録される個体のなかには,四倍体,八倍体,十倍体,異数体のものも多く存在するが,本研究では対象外とした。六倍体種6種84個体において,減数分裂第一中期で検鏡したほとんどの花粉母細胞に45個の二価染色体がみられたが,サザンカ1個体(12368S)とトウツバキ1個体(Kondo 1218)においてはさまざまな対合があり,四価染色体形成も観察された。キアズマの頻度はサザンカ50個体で幅の広い変化がみられた。20雑種において,減数分裂第一中期染色体対合で二価染色体形成がつねに優位を占めていたにもかかわらず、一価染色体およびさまざまな多価染色体形成も観察された。しかるにキアズマの頻度にも幅の広い変化がみられた。さまざまな減数分裂異常は六倍体栽培種,品種およびそれらの雑種に広くみられたが,とくにサザンカとその関係する雑種に多い傾向がみられた。ACKERMAN(1969.1971.1973)とPARKS(未発表)の六倍体栽培種交雑能力テストによれば,各節内の種内および種間でより高い交雑能力をもっており,またACKERMAN(1971)とKOND0(1975)の花粉稔性テストでは、各節内種内および種間雑種が節間雑種よりも高い稔性を示す。ところが今回の減数分裂・染色体観察からはこれらの結果を裏付ける傾向や相関関係はみられなかった。

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