育種学雑誌
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日本ウズラの肝臓エステラーゼアイソザイムに関する遺伝学的研究
橋口 勉吉満 義数前田 芳実武富 萬治郎
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1978 年 28 巻 4 号 p. 329-335

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抄録
日本ウズラの肝臓エステラーゼについて,薄層寒天ゲル電気泳動法を用いて分析を行った。その結果,陽極側の移動性の最もはやい域に個体変異,すなわちAA,BB,CC,AB,ACおよびBC型の6つのタイプが検出された。交配実.験の結果から,これらは常染色体上の同一座位に存在する3つの共優性対立遺伝子群によって支配されていることが判明した。そこでこの座位をEs-2と命名すると,表現型AA,BB,CC,AB,ACおよびBC型に対する遺伝子型は,それぞれEs-2A/Es-2A,Es-2B/Es-2B,Es-2C/Es-2C,Es-2A/Es-2B,Es-2A/Es-2C,およびEs-2B/Es-2Cとなる。ウズラの集団における遺伝子構成をしらべる目的で,鹿児島大学および佐賀大学で飼養中のもの,ならびに豊橋市の別々の3つの業者から導入した集団の合計5つの無作為交配集団に'ついて,Es-2座位の表現型出現分布と遺伝子頻度を推定した。その結果,各集団ともにEs-2Bの頻度が最も高く(0.77~0.88),Es-2Aがこれにつぎ(0.10~0.21),Es-2Cの頻度は極めて低かった(0.01~0.02)。そして表現型CCのホモ接合体は,いずれの集団においても検出されなかった。Es-2アイソザイムは,臓器特異性を示し肝臓においてのみ検出される。またエステラーゼの同定実験の結果から,アリエステラーゼであることも判明した。Es-2アイソザイムは,胚の時期では検出されず孵化当日になってはじめて一部の個体で検出されるが,その活性は極めて弱い。5日齢になるとすべての個体で検出されるが,その活性はまだ弱く以後日齢の増加と共に活性も高まり,15日齢に達すると40日齢以後の成熟ウズラとほぼ同様の活性を示した。
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