育種学雑誌
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29 巻, 1 号
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  • 梶浦 一郎, 山木 昭平, 大村 三男, 秋浜 友也, 町田 裕
    1979 年29 巻1 号 p. 1-12
    発行日: 1979/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    ニホンナシ栽培品種の起原とその変遷を明らかにして,新品種育成の基礎資料とするため,東洋産ナシ属の野生種および栽培品種,合わせて計79品種の果実に含まれる糖類(フルクトース,グルコース,ソルビトール,シュークローズ)について,その種間差,島種間差を調べた。日本在来島種を1:江戸時代中~後期に栽培記録のある品種,2:江戸時代末期から明治時代にかけて発見された品種,3:交配育成品種の3群に分けて,全糖含量を比較した結果,後期の群ほど含量が高かった。また,糖組成,特にシュークローズ率は明治に入り高くだり,最近の育成品種はやや低下した。4種の糖類の全糖含量に占める割合(%)を基に,主成分分析を行った結果,同種,同産地の品種は類似した糖組成を示し,スコアの散布図,産地等より以下の6品種群に区分した。1:二十世紀群(シュークローズ型),2:南関東群(千葉,神奈川在来品種と育成品種),3:チューゴクナシ群(ソルビトール型),4:イワナヤマナシ群(イワナヤマナシ改良品種と裏目本在来品種),5:群馬群(群馬,埼玉在来品種,フルクトース型),6:高知群。ここで,2,4,6群の糖組成は,それぞれ,1と3,3と5,5と1の中間型を示した。
  • 若狭 暁
    1979 年29 巻1 号 p. 13-22
    発行日: 1979/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    パイナップルの品種スムースカイエンの組織培養を行ない,幼小果実・えい芽・冠芽・吸芽とえい芽の腋芽から約800の植物体を誘導した。このうち,448個体が土壌に移植後も生育を続けている。本報告は,組織培養技術をパイナップルのような自家不和合性の栄養繁殖作物における大量増殖と変異体の作出法として適用することを目的として,これらの分化植物体にみられる変異の種類と出現の状況をまとめたものである。観察された形態的変異の主なものは以下の4形質に関するものであった。(1)とげ:正常型は葉の先端に極く少数のとげを出現するのに対し,葉の全縁にとげを出現するもの,稀に片縁のみにとげを出現するものが得られた。(2)葉色:正常型の葉色を濃緑色とすると,緑色あるいは黄緑色の変異体が得られた。(3)ろう質:正常型の葉の背軸側の裏面は白い粉状のろう質によって覆われているのに対し,ろう質の分泌が少ない変異体が得られた。(4)葉の密生程度:正常型の葉数の約1.5倍から2倍の葉数をもつ変異体が得られた。このほか,葉の巾が正常の,1/2程度の細葉型や葉に白色のしまの入るものがいくつか得られた。これらの変異の出現頻度と出現の型は培養に用いた器官の種類によって異なっていた。すなわち,果実とえい芽は高頻度で変異体を生じたが,冠芽と腋芽は正常型を多く生じ,変異体の出現は低頻度であった。また,果実より生じた変異体は,葉色・とげ・ろう質・葉の密生程度の4形質に関する変異を示したが,えい芽・冠芽・腋芽より生じた変異体の大多数はとげに関するものであった。これらの変異が多数生じた原因として,培養によって生じた場合と培養材料がキメラであった場合などが考えられた。結論として,組織培養技術をパイナップルの大量増殖と変異体の作出という二つの相反する目的に利用するためには,各々の目的に適した器官を培養することが必要と考えられる。
  • 長戸 康郎
    1979 年29 巻1 号 p. 23-32
    発行日: 1979/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イネ(品種目本晴)を用いて生育温度の変動に対する竿の年長反応を調べた。変温:30~25℃,25~20℃及び定温:20℃の三つの温度条件下で生育させた場合,胚の生長速度は高温になる程大きくなった。Lかし,指数生長開始時の細胞数及び細胞増加率の転換時の細胞数は温度条件にかかわらず一定である。従って,上記のような生長様式の転換は生育温度と無関係に決定されていると考えられる。胚の形の変異を,胚長と胚厚の相対生長係数及び胚厚/胚長値に基づいて調べたところ,低温になるに従って胚の形の変異は大きくなった。特に球状胚段階での変異が大きくなり,この段階は生育温度の変動に対して不安定な時期であると考えられる。次に,30~25℃で生育させ,球状胚中期・後期及び第2葉分化後にそれぞれ24時間の20℃温度パルスを与え,どの時期が不安定であるかを調べた。いずれの時期に温度パルスを与えても,胚の生長はパルス後直ちに約12時間の遅延を示した。しかし,生長の遅延からの回復はいずれの場合にも成熟後期の開花後12日目頃(胚長約1700μm)であって,初期にパルスを与えても生長の遅延からの回復は早くならない。このことは,低温パルスが生長の時間的遅れをもたらすだけであり,生長曲線のパターン自体は変化せず安定なものであることを示している。また,相対生長係数及び胚厚/胚長値に基づいて胚の形の変異を調べると・球状胚中期及び後期での低温パルスによってパルス後の胚の形の変異は大きくなった。一方,第2葉分化後に低温パルスを与えた場合には,胚の形の変異は無処理区のものとほとんど変らなかった。従って,球状胚段階,特にその後期,は不安定な時期であるが,形態的分化後の胚は安定なものとなる。
  • 佐藤 正孝, 今西 茂, 樋浦 巌
    1979 年29 巻1 号 p. 33-38
    発行日: 1979/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    キュウリ(Cucumis sations L.cv.`Shinko Fushinari N0.10')のカルスから植物体を分化させることを目的として本研究を行なった。まず,実生の胚軸中問部1cmを,ショ糖を含むMURAsmGE & SK00G(1962)の基本培地に,オーキシンとしてナフタレン酢酸(NAA),サイトカイニンとしてべンジルアゲニン(BA)を種々の濃度で組合せた寒天培地上で培養した。つづいて,実験は,置床した胚軸を他へ移植せずに継続培養する場合と形成したカルスを取り出し,アズキ粒大に細分して,NAA,BAとも無添加とBA単独添加の2種類の再分化用培地に移植する場合の二つに分けて行なった。(1)胚軸置床後移植を行わない場合胚軸からのカルス形成は全般に良好であったが,少なくとも0.1ppm以上のオーキシンあるいはサイトカイニンの培地への添加が必要であった。発根はNAAO~10.0ppmとBA0~1.0ppmを組合せた培地でみられ,発根率はBA濃度が低いほど高かった。一方,茎葉の分化は,低頻度ではあるが,BA濃度がNAA濃度より高いか同じ場合,すなわち,NAA0~1.0ppmとBA1.0ppmを組合せた培地でみられた。しかし,これらの分化した茎葉は一部のみが生長をつづけ,結局,NAA0.01ppm,BA1.0ppmを添加した培地でのみ完全な植物体がえられた。(2)胚軸置床後形成したカルスを移植する場合茎葉の分化は,NAA0.01~1.0pPmとBA1.0pPmを組合せた培地で形成したカルスを再分化用培地に移植したときにみられた。そのうち,完全な植物体への生長は,NAA,BAとも無添加の培地へ移植した場合にえられた。発根はNAA,BAとも無添加の再分化用培地に移植した場合のうち,茎葉分化のみられた区でのみ認められた。
  • 江口 恭三, 前原 為矩
    1979 年29 巻1 号 p. 39-48
    発行日: 1979/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    近年沖縄県下で古い在来種タバコの子孫と思われる12の自生タバコの種子が蒐集されたが,これらの蒐集系統について,形態特性ならびに主要病害に対する抵抗性を調査するとともに育種素材としての有用性を検討した。これら蒐集系統の問にはきわめて広範な形態変異がみられ,草丈は95.3cmから171.9cm,葉数は9.8枚から17.3枚,葉型指数は0.471から0.764まであり,葉型には有柄と無柄,花色にはピンク,白,ピンクと白の絞りの3種類があった。病害抵抗性については,いずれも黒板病とうどんこ病にはある程度の低抗性を示したが,立枯病にはほとんどが罹病性で,疫病には高度抵抗性から罹病性まで広範な変真が認められた。従来わが国の在来種の中には疫病に対して高度な低抗性を示す品種はみつけられておらず,本試験で高度な低抗性を示した系統は育種素材として有用であると推察された。
  • 長戸 かおる
    1979 年29 巻1 号 p. 49-58
    発行日: 1979/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    本研究はアイソザイムの変異傾向から,ツバキ属植物中,我が国に自生あるいは栽培されている種を中心ヒその類縁関係を明らかにしようとしたものである。扱った酵素種は,パーオキシターゼ,エステラーゼ,アシドホスファターゼである、アシドホスファターゼについては,種間お一よび種内での明瞭な差が見られなかった。パーオキシターゼとエステラーゼに関しては,各種とも多様なアイソザイム変異を示したが,多くの場合,種や変種に特異的なパンドもザイモグラムも見られなかった。そこで,パターン分析および集団問距離の計算により種間および種内関係を推定した。2酵素種の示す結果は互に異なっていたが,一方では2酵素種とも全種に共通のパンドが見られたことから,ツバキ属の各種はツバキ属としての同質性を保ちだから,酵素種ごとに異なった分化をしているようである。総合すれば,チャとサザンカは層内で遠い関係にあり,ツバキはその近縁種と共に両種の中間に位置すると考えられた。ツバキとサザンカとの雑種と推定されているバルサザンカとカソシバキのパーオキシターゼは,両名の特徴を合わせもつザイモグラムを示した。ワビスケのエステラーゼは,チャとは非常に異なるがツバキとはよく似たザイモグラムを示した。チャの種内では,シナ種とアッサム種との間に違いが見られ,日本種はシナ種に近かった。ツバキおよびサザンカの種内では,園芸品種と野生系統の間で,数本のバンドの出現頻度に違いが見られた。
  • 山本 喜良
    1979 年29 巻1 号 p. 59-65
    発行日: 1979/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    種問雑種後代における両親遺伝子の組換と遺伝的固定度を推定するため,Vicia amphicarpa,true(2n=14)とV.macrocarpa(2n=12)との雑種について,ポリアクリルアミドディスク電気泳動法を用い,アミラーゼのアイソザイムパターンを調査した。V.amphicarpa,,trueではα1,α2およびβ2,V.macrocarpaではα1,α2およびβ1のそれぞれ3本のバンドが検出された。これらのうち,α1とα2は両親間でRf値に差はなく,それぞれ同一であった。F1とR2では両親からの4本のバンドがすべて現われた。またF2では個体問で差異はなかった。F3植物では,両親バンドをいろいろの組合せに持つ10のバンド型が出現した。F3,F4で現われた各バンド型の出現率は,系統間で差異があった。これらのバンド型はβアミラーゼバンドによって3つの群に分類された。そのうちの1つは,父親のβ1バンドをもつI,II,III,IV型群であり,他はβ1とβ2をともに持つV,VI,VII,VIII群と,母親のβ2バンドをもつIX,Xバンド群であった。またF3とF4の両世代ともに,各バンド型群の個体の出現率とその前代の核型との間で関連が認められた。
  • アルマンド,ガルシア , 市川 定夫
    1979 年29 巻1 号 p. 66-76
    発行日: 1979/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    アボカドは,メキシコをはじめ,北米南部から中南米にかけて広く栽培される重要な果樹であるが,その遺伝学的,系統分類学的研究は,あまり進んでいない。最も普遍的な栽培型のアボカドは,分類学上,かつて2種または3種に分けられていたが,現在では,1種(Persea americana)として扱われ,3変種(var.americana, var.drymifolia,var.nubigena)を含むものとされている。一方,園芸学上は,グァテマラ系,西インド諸島3系,メキシコ系の3系に分けられ,前2系はvaramerivana.メキシコ系はvar.drymifoliaに属するとされている。ただし,異系間の雑種形成が起こるため,3系への分類は必ずしも容易ではない。この研究では.著者らがメキシコ各地から集めた52系統と,ハワイのハミルトン教授から提供を受けた9系統のアボカド(Table1)について,発芽後4か月間空調温室で育てた芽生の30形質(Table2)を調査し,統計学的分析によって変異の程度とそれによる類縁度の解析を行なったものである。分散分析の結果,調査した30形質中,15形質については系統問差異が有意であった(Table3)。また,このうち14形質は,園芸学上の3系間でも有意差が見られた(Table4).これら形質間には,高い相関関係が見られる場合が多く(Table5),そのうち6組の2形質について相関図を画くと(Fig.1),一般にメキシコ系がグァテマラ系および西インド諸島系から区別でき,後2系間には明白な区分がつけられないことが判明した。それゆえ,グァテマラ系と西インド諸島系はより近い類縁関係にあり,メキシコ系はかなり離れていると考えられる。異系間の雑種起原と考えられるもののうちにば,形質相関図上でも中間型を示すものがいくつか見られた。
  • 清沢 茂久, 相原 次郎, 井上 正勝, 松本 節裕
    1979 年29 巻1 号 p. 77-83
    発行日: 1979/03/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    後藤らによってイネのいもち病菌のレースに関する研究が始められたのと期を一にして,イネ品種のいもち病抵抗性に関する分類が始められ,これまでに多くの研究者がこの種の分類を試みている。これらの研究結果の集積は著しいが,研究者により分類の方法が異なるため整理の必要に迫られている。ここでは,山崎・清沢(1966)の7菌糸(P-2b,研53-33,稲72,北1,研54-20,研54-04,稲168)による分類を基調にしてイネのも・もち病抵抗性に関する遺伝子型による分類を試みた。
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