抄録
キュウリ(Cucumis sations L.cv.`Shinko Fushinari N0.10')のカルスから植物体を分化させることを目的として本研究を行なった。まず,実生の胚軸中問部1cmを,ショ糖を含むMURAsmGE & SK00G(1962)の基本培地に,オーキシンとしてナフタレン酢酸(NAA),サイトカイニンとしてべンジルアゲニン(BA)を種々の濃度で組合せた寒天培地上で培養した。つづいて,実験は,置床した胚軸を他へ移植せずに継続培養する場合と形成したカルスを取り出し,アズキ粒大に細分して,NAA,BAとも無添加とBA単独添加の2種類の再分化用培地に移植する場合の二つに分けて行なった。(1)胚軸置床後移植を行わない場合胚軸からのカルス形成は全般に良好であったが,少なくとも0.1ppm以上のオーキシンあるいはサイトカイニンの培地への添加が必要であった。発根はNAAO~10.0ppmとBA0~1.0ppmを組合せた培地でみられ,発根率はBA濃度が低いほど高かった。一方,茎葉の分化は,低頻度ではあるが,BA濃度がNAA濃度より高いか同じ場合,すなわち,NAA0~1.0ppmとBA1.0ppmを組合せた培地でみられた。しかし,これらの分化した茎葉は一部のみが生長をつづけ,結局,NAA0.01ppm,BA1.0ppmを添加した培地でのみ完全な植物体がえられた。(2)胚軸置床後形成したカルスを移植する場合茎葉の分化は,NAA0.01~1.0pPmとBA1.0pPmを組合せた培地で形成したカルスを再分化用培地に移植したときにみられた。そのうち,完全な植物体への生長は,NAA,BAとも無添加の培地へ移植した場合にえられた。発根はNAA,BAとも無添加の再分化用培地に移植した場合のうち,茎葉分化のみられた区でのみ認められた。