抄録
カソキツなどの永年生作物の育種は,イネだとの一年生作物のそれに比べ,非常に困難な問題が多い。もし半数体が得られるならぼ,遺伝分析が容房になることと合わ晋て,計画的な育種が可能となり,育種効率は著しく高められるであろう。そこでまず,カラタチの締培養を行い,半数体の作出を試みた。培地はMURASHIGE and SK00G(1962)の処方に,IAA,NAA,2,4-D,Kinetinを組み合わせて添加したものを用いた。置床後3週間目頃から,心臓形や子葉状の胚横体が,繭の表面からカルスを経ずに直接突出してくるのが認められるようになり,それらは次第に幼芽を分化した。蒲の発育段階では,1核期前後の繭が胚横体を多く分化し,花粉母細胞期と2核期の蒲からは植物体は分化し次かった。培地の種類では,IAA0.2m9g/lとKinetinを組み合わせた培地が高率に胚横体を分化した。ほとんど同時にカルスの形成も起こったが,それらは特に2,4-Dを含む培地で認められた。また,塊状組織を形成し,それから茎葉を分化するものもわずかに認められた。分化した植物体は,そのままではすべて根が形成されたかっ.たので,植物生長調節物質を除いた培地に植えかえて根の分化を図った。茎葉を形成していたものはすべて根を分化し,完全た植物体へと生長したが,塊状組織を形成していたものは,植えかえ後まれに根や茎葉を分化するものもあったが,多くは2ヵ月経過Lた後も根や茎葉を分化せず,そのまま褐変枯死した。また照明下でも白色のままの組織があり,特に塊状組織にその割合が高かった。