育種学雑誌
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Brassica campestrisの核を持ちDiplotaxis muralisの細胞質をもつ雄性不稔系統の研究 : I.育成経過と本系統の二,三の特徴
日向 康吉今野 昇
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1979 年 29 巻 4 号 p. 305-311

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抄録

1.D.muralisを母本とし,B.campestris(市販品種ユキナ)を交雑し,更にユキナを連続戻し交雑することにより,D.muralisの細胞質を持ちユキナの核をもつ雄性不稔系統を育成した。2.本系統の形態はユキナとよく似ているが,花の器管に差が見られる。蜜腺は2個となり,花弁が細く,短い花糸で先の尖った繭の中の花粉粒数は減少していた。雌ずいは形態的にも機育量的にも正常であった。3.本系統には2種類の雄性不稔個体が認められた。繭が裂開したい完全雄性不稔性(MS)のものと,他は小量の花粉を放出する半不稔性(PMlS)のものである。全個体がMSになる系統を得るために,市販ユキナの自殖後代からと,ユキナ(母本)×PMSの交雑後代からと,2つの維持系統を作成した。これらを花粉親として用いることにより完全雄性不稔系統ができた。4.ユキナ(母本)×PMSの次代はすべて締が正常で,多量の花粉を含んでいた。5.Aゲノム(B.campestris)の多数の市販品種とのF1には稔性を回復するものがあり,回復遺伝子の存在が示唆された。本雄性不稔性はB.campestrisの核とD.muralisに由来する細胞質によって支配されていると考えられる。6.維持系統を1系統に固定すると,その自家不和合性によって種子稔性が低下する可能性があることが示唆された。

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