抄録
水稲品種の感温性,感光性,基本栄養生長性が自然日長下の温度反応すなわち出穂目の年次変動にどのような影響を及ぼすかを明らかにするため,日長および温度を制御したグロースキャビネットを使用し,日本各地の代表的な44品種の感温性,感光性,基本栄養生長性を求めるとともに,自然日長下の出穂の温度反応を開放型変温装置を利用して求め,両者の関係を重回帰分析(偏回帰と重相関)により検討した。本研究において,日本各地に栽培される品種について,目長の影響を消去した真の感温性がどのような特徴をもっているかが初めて明らかにされた。また真の感温性の強弱は自然日長下の出穂の温度反応の大小にほとんど影響を及ぼさなかった。この現象は感温性の発現が自然目長下においては主として感光性によって強く抑制されていることに起因すると推定され,その感光性の抑制力は生育温度が高い程強い傾向を示した。基本栄養生長性は自然日長下における感温性の発現に対し,生育温度が低い場合にのみ抑制的な作用をもつことを明らかにした。