育種学雑誌
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ニホンナシ(Pyrus serotion Rehd.)とリンゴ(Malus pumila Mill.)の属間交雑
志村 勲清家 金嗣宍倉 豊光
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1980 年 30 巻 2 号 p. 170-180

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抄録

ニホンナシとリンゴの属間雑種育成をはかるための基礎的知見を得る目的で,1974年,1976年および1977年に交雑試験を行なった。1974年にはニホンナシ5品種とリンゴ3品種を用いて正逆交雑を実施した。ニホンナシ×リンゴでは受粉花数1306花にたいして221個の成熟果が得られ,結果率は16.9%であった。そのうち4果は無種子果であった。稔性種子は1172粒が得られ,果実の平均種子数は5.4粒であった。リンゴ×ニホンナシでは受粉花数1152花にたいして118個の果実が得られ,結果率は10・2%であった。それらのうち4果が無種子果であった。362粒の稔性種子が得られ,平均種子数は3.2粒であった。1976年および1977年にはニホンナシ3品種にリンゴ3品種の花粉を受粉した。受粉花数1030花にたいして248個の果実が得られ,結果率は24・1%であった。得られた果実のうち64果が無種芋果実であったが,とくに1977年の幸水を母樹とした交雑において無種子果が多かった。863粒の種子が得られ,平均種子数は4.7粒であった。ニホンナシとリンゴの属間交雑における結果率や稔性種子数は,それぞれの品種問交雑の場合に比べて低かった。LかL正逆交雑において稔性種子の得られることから,両者問には交雑親和性が存在するものと考えられた。属間交雑によって得られた種子の発芽率はニホンナシを母樹とした場合が86.3%,リンゴを母樹とした場合が71.1%であった。いずれも品種間交雑種子の発芽率よりも低かった。幼苗期の実生の葉形は多くの場合,両親の中問を示したが,両親のどちらかに類似する少数の実生も認められた。これらの雑種実生は,本葉数枚の幼苗期までにすべて死滅した。

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