育種学雑誌
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30 巻, 2 号
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  • 木下 俊郎, Toshiro KINOSITA
    1980 年 30 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 1980/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    核遺伝子雄性不稔2種(メロン,カボチャ),細胞質雄性不稔5種(タマネギ,テンサイ,トウガラシ,ナス及びコムギ)並びに4植物種(トウガラシ,Datura, Ranunculus及びゴマ)においてMH,FW450,またはDaraponの如き除雄剤を用いて誘発した雄性不稔植物をそれぞれ材料として,正常型植物との間で締組織並びに小胞子の発育経過を比較観察した。雄性不稔植物の多くでは,蒲壁組織について,表皮並びに内皮の細胞が放射方向よりむしろ接線方向へ伸長し,内皮の繊維状発達も抑制される事が認められた。タベート組織ではほとんどすべての雄性不稔で何らかの異常が見出されたが,異常の起る時期や過程は材料により異なり,以下の4種の異常型に分けられた。(1)減数分裂期以前における崩壊(2)蒲の全発育期問を通じてタベート細胞の原形のままでの残存(3)胞原細胞期,減数分裂期,四分子期,小胞子期のいずれかに生ずるタベート細胞の異常肥大(4)多核の周辺偽変形体の形成と崩壊。一方,蒲隔組織にも,維管束系の分化の抑制,柔細胞の崩壊の徴候並びに一細胞内における種々の大きさの透明穎粒の集積が観察された。以上の結果から材料の起源を間わず,一般に雄性不稔植物に一認められるタベート組織の異常は維管束系の発育不全により生じた結果と考えられ,細胞内含有物は,おそらく小胞子形成の際に不要とたった物質の集積によるか,あるいは維管束系の異常により生じた産物と推定される。この様た事実は著者らが先に行った組織化学的観察に基づいた推論を支持する結果となった。
  • 鵜飼 保雄, 山下 淳
    1980 年 30 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 1980/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    六条皮表竹林茨城1号より放射線または化学物質処理で誘発された150の早熟性突然変異系統を縞萎縮病の汚染圃蕩で栽培した結果,高度の抵抗性を示す系統(コード番号Ea52)が見出された。原品種および他の全系統が縞萎縮病特有の病徴である嬢化および葉の黄化を示したのに対し,Ea52は正常な生育を示した。Ea52と罹病性系統Ea17とのF2雑種集団について病徴の有無および株重を調査した結果,Ea52の病害低抗性は劣性方向への単遺伝子性突然変異によることが判った。Ea52の縞萎縮病低抗性は早熟性と遺伝的に無関係であった。葉のDip法による電顕観察から,原品種はオオムギ縞萎縮ウイルス(BYMV)のほかムギ類萎縮ウイルス(SBWMY)にも感染していたが,Ea52の健全個体はBYMV,SBWMVのいずれにも犯されていたいことが認められた。
  • 三野 真布
    1980 年 30 巻 2 号 p. 131-138
    発行日: 1980/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    トウモロコシの雑種強勢を研究するために,発芽種子の形態的,生理的形質をF1雑種とその両親近交系統(母親:0h545,父親:W22)との間で比較した。雑種は30℃で,両親よりも遠く根鞘,幼根を抽出し,その後の芽はえの生長も遠かった。Lかし,種子の吸水速度は両親とF1の間に差はたいので,F1種子の発芽の速やかさは吸水後での胚の細胞の活性化遠度が,両親よりも遠いためにおこるものと考えた。発芽,生長にとって重要なエネルギー源と考えられる胚中の非還元糖と還元糖含量は,F1が発芽48時間目以降で両親より高くたった。タンパク質合成阻害剤のシクロヘキシミド(5×10-5M)で種子を処理すると,どの系統も発芽は完全に阻害されるが,胚中の非還元糖含量は40時間目までは無処理区と同様に低下した。発芽濾液中への糖の漏出はみとめられたかったので,発芽初期の糖を分解する過程はシクロヘキシミドにより阻害をうげにくいものと考えた。しかし,48時間目以降では無処理区の場合,胚中の糖含量が増加するのに対し,処理区では低下する傾向にあった。
  • 藪谷 勤, 山縣 弘忠
    1980 年 30 巻 2 号 p. 139-150
    発行日: 1980/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    わが国の代表的なアイリスであり,かつ互いに交雑不和合性が極めて高いハナショウブ(I.ensata Thunb,var. ensata, 2n=24)とカキツバタ(I.laevigata Fisch., 2n=32)を供試し,両種の自家受粉後並びに正逆交雑後の種子発育を追跡調査Lて雑種種子崩壊の原因を探るとともに,胚培養による雑種植物の育成を試みた。正逆両交雑とも充実不良でかつ発芽不能の種子のみを生じたが,いずれの場合も胚乳は常に胚にさきがけて退化した。即ち,ハナショウブ×カキツバタでは受粉21日後には胚乳,ついで27日後には胚の退化が観察され,一方カキツバタ×ハナショウブでは受粉27日後に胚乳の退化が認められたが,胚は観察期問中(受粉33日後まで)退化には至らたかった。また両交雑とも珠心や珠皮だとの母六組織には何ら異常が認められたかった。さらに後述するごとく,適切な胚培養を行えばF1、植物を獲得L得ることが明らかにたった。これらのことから,両種の正逆交雑における種子崩壊の原因は胚乳の退化にあると結論される。なお,胚の発育限度に関して正逆交雑間に差異が認められた。即ちハナショウブ×カキツバタでは器官原基の分化が全くみられなかったが,カキツバタ×ハナショウブでは葉や根の原基が分化した。この差異は胚乳の発育限度の差異に基づくものとふられる。カキツバタ×ハナショウブの交雑後約60日目の種子より胚をとり出してこれを培養し,F1雑種(2n=28)を育成することに成功Lた。この植物について形態的特性を明らかにし,育種的意義を検討Lた。
  • 山川 理, 坂本 敏
    1980 年 30 巻 2 号 p. 151-160
    発行日: 1980/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    カンショ作を省力化するために,真性種子を直接播種するいわゆる種子播栽培に適した品種の育成が期待されている。本研究では自然条件下でも開花結実する露地開花性系統を利用した種子播用合成品種の育種法を検討するために,筆者らの保有している露地開花性系統を基本集団として次のような方法で試験を行なった。すなわち試験Iでは支柱栽培での開花結実性と挿苗栽培での収量性を調査し,試験IIでは試験Iで自然交雑した集団について採種粒数の多い系統の種子播栽培における収量性を調査し,切干歩合の高い多収な母本系統を選抜するとともに次世代を作成するために選抜母本系統の実生集団から個体選抜を行なった。その結果露地開花性集団における開花まで同数・開花数・採種粒数だと開花結実性についての変異は大きく,それらと挿苗での株当り総いも重や切干歩合などの実用形質とは相関が認められなかったため,実用形質のすぐれた露地開花性系統の養成は可能であろうと考えられた。開花習性については4つの型に分類できたが,ほとんどの系統は7月下旬~8月上旬に咲き始め,開花数は8月中旬~9月上旬に最高に達し,以後減少する型に属した。
  • 鈴木 洋, 山縣 弘忠
    1980 年 30 巻 2 号 p. 161-169
    発行日: 1980/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    育種上の観点より,アイリス種子にみられる難発芽性の原因を明らかにし,発芽促進の方法を知るため,キショウブの成熟種子を供試し,発芽環境条件の制御たらびに種皮の除去,溶脱あるいは胚乳の一部切除などの予措を行なって発芽試験を実施した。その結果,内種皮ないし内種皮と胚乳の問に存在する油脂様物質による胚のガス交換の阻害が難発芽性の主要因であること,外種皮除去後クレンザーやキシレンで洗浄すると著しく発芽が促進されることなどが明らかにされた。
  • 志村 勲, 清家 金嗣, 宍倉 豊光
    1980 年 30 巻 2 号 p. 170-180
    発行日: 1980/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    ニホンナシとリンゴの属間雑種育成をはかるための基礎的知見を得る目的で,1974年,1976年および1977年に交雑試験を行なった。1974年にはニホンナシ5品種とリンゴ3品種を用いて正逆交雑を実施した。ニホンナシ×リンゴでは受粉花数1306花にたいして221個の成熟果が得られ,結果率は16.9%であった。そのうち4果は無種子果であった。稔性種子は1172粒が得られ,果実の平均種子数は5.4粒であった。リンゴ×ニホンナシでは受粉花数1152花にたいして118個の果実が得られ,結果率は10・2%であった。それらのうち4果が無種子果であった。362粒の稔性種子が得られ,平均種子数は3.2粒であった。1976年および1977年にはニホンナシ3品種にリンゴ3品種の花粉を受粉した。受粉花数1030花にたいして248個の果実が得られ,結果率は24・1%であった。得られた果実のうち64果が無種芋果実であったが,とくに1977年の幸水を母樹とした交雑において無種子果が多かった。863粒の種子が得られ,平均種子数は4.7粒であった。ニホンナシとリンゴの属間交雑における結果率や稔性種子数は,それぞれの品種問交雑の場合に比べて低かった。LかL正逆交雑において稔性種子の得られることから,両者問には交雑親和性が存在するものと考えられた。属間交雑によって得られた種子の発芽率はニホンナシを母樹とした場合が86.3%,リンゴを母樹とした場合が71.1%であった。いずれも品種間交雑種子の発芽率よりも低かった。幼苗期の実生の葉形は多くの場合,両親の中問を示したが,両親のどちらかに類似する少数の実生も認められた。これらの雑種実生は,本葉数枚の幼苗期までにすべて死滅した。
  • 馬上 武彦
    1980 年 30 巻 2 号 p. 181-189
    発行日: 1980/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    第1報でハクサイの胚,胚乳の細胞分裂・伸長は,放射線により著しく抑制されることが明らかにされたので,カンランにおいても,ハクサイの場合と同様の目的で,各組織の分裂・伸長が放射線によってどのようた障害を受けるかまた,その障害の組織間差を量的に明らかにしようとした。材料は,カソランの品種「金盃」を用い,受粉5日後の前歴と受粉10日後の球形胚に6^0Coγ線10KRおよび20KRを1目急照射した。照射時および照射後6,9,12,15日に胚珠を固定し,その後パラフィン切片を作成して,胚の縦・横の長さ,胚の細胞数,頂部・基部胚乳の核数,胚珠の縦・横の長さを測定した。また,上と同一の照射時期の種子稔性と発芽についても調査した。種子稔性と発芽は,両照射時期とも,放射線処理による影響が大きく,10KR照射では,O~29.7%,20KR照射では0%であった。胚の大きさ(胚の縦・横の長さ)は,放射線により強く抑制され,受粉5日後(前歴)照射より,受粉10日後(球形胚)照射で影響が大きく,ハクサイと同様の結果となった。胚の細胞数および胚乳の核数は,胚の大きさと同様に放射線により大きな障害を受け激減した。胚珠の大きさは,放射線による影響が小さかった。胚細胞の大きさは,ハクサイと同様に照射区では,対照区よりも大きく肥大した。形質間の放射線の影響は,胚の細胞数が最も強く,次に胚の伸長,胚乳の核数,胚珠の伸長の順であった。
  • 福原 檜勝
    1980 年 30 巻 2 号 p. 190-193
    発行日: 1980/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
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