抄録
分離初期世代での個体選抜が有利であるための条件を理論的に導いた。数値計算の結果,質的形質のみならず最的形質についても出穂日や草丈,草型に関係するいくつかの形質のように評価が容易でかつ遺伝力が高い形質の場合は,この条件が満たされることが示された。有望遺伝子型が高い頻度で選抜される形質に対する初期選抜は特に効果的である。このことは,これら形質と初期世代で選抜の対象とされない他形質との間にかたり強い負の遺伝相関がある場合でもいえる。F2およびF3の初期世代に十分多くの個体を供試し,これら形質に関して優良な個体を積極的に選抜する育種方式の方が,我国現行の集団育種法におけるようにF4あるいはそれ以降の世代までほとんど選抜を行なわない育種方式よりも,同一育種コスト(時間,労力を含む)の下での育種成功率が高いことが示された。