育種学雑誌
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新・旧二条大麦品種の肥料反応の比較研究
高橋 隆平武田 元吉林 二郎守屋 勇
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1981 年 31 巻 2 号 p. 183-198

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抄録
わが国の主要な新旧二条大麦品種の農業形質や醸造品質に関する育種的進歩と各形質の肥料反応の品種問差異を知るため本実験を行たった。材料はTable1に示した10品種で,うち8品種は古い外来品種と,交雑により育成された二条種である。たお,比較のため六条の2品種を加えた。施肥量を標準肥(試験地の慣行施肥量)とその半量,11/2倍および2倍量の4段階とし,3反復の分割試験区法により倉敷で比較試験した。また,醸造品質検定は栃木分場で行なった。農業形質では,顕著な育種的進歩が認められた。新しい育成品種ほど著しく短稈,早熟となり(Table3),穂数の増加も顕著である。反面,穂は若干短かく,1穂粒数や千粒重もかなり減少するが,整粒歩合はほとんど旧品種と差がない(Table4,Fig・2と3)。しかし収量やその肥料反応については,品種間に若干の差が認められるが,多肥多収化傾向はみられない。醸造用品種の調査結果(Tables6と7)は,最近の育成醸造用品種の中に麦芽可溶性窒素含量(SN)が高く,また多肥条件でも安定した良質の麦芽品質を維持しているものがあることを示した。しかし少肥条件では外来品種にさらに良質性を示すものがある。調査した諸形質は,肥料と品種との交互作用がごく弱く,大抵の品種はそれぞれの形質について同じ傾向の肥料反応を示した。そこで,諸形質を次の3群に区分することができた(Tab1e9)。(1);増肥にともない逐次増加する形質(収最,1穂数,粒や麦芽の窒素含量など),(2);標準の11/2および2倍量の施肥で逐次低下する形質2(千粒重,収穫指数,麦芽品質評点など),(3);施肥量の多少と関連の少ない形質(1穂着粒数,麦芽収量,最終発酵度など),なお,この結果にもとづき,収量や千粒重と醸造品質に関する諸特性との関係について考察した。
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