育種学雑誌
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31 巻, 2 号
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  • 徳増 智, 亀井 聡, 加藤 正弘
    1981 年31 巻2 号 p. 109-120
    発行日: 1981/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    ミズナ,カラシナおよびナタネ種子の休眠覚醒とその後の生存力に及ぼす貯蔵湿度と発芽温度との影響を見るため,採種後直ちにO,15,34,51および78%の空気湿度中に貯蔵し,以後一定期間毎に種子を取り出し,5,15,25,35および45℃の温度で発芽試験を行なった。発芽試験はミズナで8か月,カラツナで19か月,ナタネで11か月継続した。種子の休眠覚醒に対する最適の貯蔵湿度はミズナ35~50%,カラシナ15~50%,ナタネ0~35%で,その他の湿度区では休眠覚醒は不完全のまま推移し,乾燥または多湿貯蔵の休眠覚醒阻害の影響が認められた。また発芽温度に関しては,いずれの種類も,採種直後は15Cで発芽を始め,休眠覚醒と共に25,35,5℃の順に発芽温度域を広げ,45℃での発芽が最も遅かった。種子の寿命に対する貯蔵湿度の影響については,試験期間が短いため明らかな差異を認めなかった。従来の報告から生存力維持のための最適貯蔵湿度は20~30%付近と予想される。休眠覚醒後の種子の最適発芽温度は,ミズナ,ナタネで15~35℃,カラシナで15~25℃で,最低発芽温度はいずれも5℃以下,最高発芽温度はミズナでは45℃に近いが,カラシナ,ナタネでは45℃以上である。また種子の活力が衰えるにつれて,発芽可能な温度範囲が次第に狭められる傾向にある。一貯蔵湿度ならびに発芽温度の組合せから見ると,種子の発芽率は適温・適温区が最も高く,一方のみが適当な区がこれに次ぎ,両者ともに不適当な区が最も低かった。このような現象は,貯蔵湿度と発芽温度の効果はそれぞれほぼ独立的で,両者の要因が相乗的に作用して生じた結果と考えられる。
  • 山口 隆
    1981 年31 巻2 号 p. 121-132
    発行日: 1981/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    わが国の重要花きであるキクの白さび病抵抗性育種を進めるため,病葉つり下げ接種による低抗性の検定法を開発し,生育時期および菌株による抵抗性の変動,抵抗性による種および品種の類別,ならびに抵抗性の遺伝について検討Lた。低抗性を早期にかつ正確に判定するため,生育時期による抵抗性の変動を調べたところ,幼苗期と開花期の検定結果はよく一致し,幼苗による早期検定の可能なことがわかった。また,低抗性品種の罹病化に関する知見を得るため,6種類の菌株に対する40品種の反応を検討したところ,品種の抵抗性反応は菌株によって異なり,菌の寄生性分化が確認された。菌株の寄生範囲には広狭の差があり,一方,品種には,菌株によって抵抗性反応の変動するものと,いずれの菌株にも抵抗性を示すもののあることが判明した。母本選択と防除対策の情報を得るため,代表的な菌株を接種源とし,キク属植物19種および切花ギク250品種の幼苗検定を行った結果,本病低抗性には顕著な種間ならびに品種間差異があり,抵抗性の程度によって5群に類別することができた。さらに,低抗性の遺伝に関する知見を得るため,寄生範囲の異なる2菌株を接種源に用い,低抗性程度の異なるF124組合せの幼苗検定を実施したところ,両菌株とも,F1における抵抗性個体の出現頻度には正逆差がたく,両親とF1個体との抵抗性の間には密接な平行関係が認められた。以上の結果から,病葉つり下げ接種による幼苗検定法を活用し,適当な母本と菌株を選択することによって,本病抵抗性育種は効率よく遂行できるものと思考される。
  • 丸橋 亘, 中島 哲夫
    1981 年31 巻2 号 p. 133-140
    発行日: 1981/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    試験管内受精法を遠縁交雑に利用しようとする試みは,2,3なされているが,まだ具体的な成果は得られていない。この原因の一つには,雑種胚を含む胚珠の培養技術に不備な点が多いことをあげることができる。しかし一方,花粉管の伸長,胚珠への侵入など試験管内での受精にいたる過程についても解決しなげればならない問題が残されている。このようなところから,本研究では,in vitroの実験に先立って,まず子房内における花粉管の行動を詳細に検討しようと考えた。タバコを自家受粉し,子房内における花粉管の行動を,主として走査型電子顕微鏡により経時的に観察した。一方,暗視野顕微鏡によって,花粉管の胚珠への侵入を簡易に確認できることを明らかにし,その手法を本研究に利用した。この方法では,花粉管が侵入した助細胞が,他の細胞に比べ著しく輝いて観察される。この現象は,異種(ペチュニア)の花粉管が侵入した場合にも同様に観察された。観察の結果,次の諸点が明らかにたった。花柱の中心部を通る誘導組織は,花柱の基部で2分し,各々胎座上部にスリットとなって開口している。受粉後約32時間目に,花粉管はこのスリットから束になって子房腔内に現れた。しかし,これらの花粉管は胚珠に侵入することなく,胎座表面こ花粉管の層を作って下降し,早いものは受粉約38時問後には胎座の基底部に達した。一方,おくれてスリットから子房腔に出た花粉管は,花粉管の層の上を伸長するので,珠孔により近い位置にあり,これらの花粉管が珠孔に侵入するものと考えられた。また,タバコでは珠孔が珠柄に対して胎座の基部側に開口しているので,花粉管はその伸長方向を変えて珠孔に侵入することが観察できた。
  • 金田 忠吉, 伊藤 清光, 池田 良一
    1981 年31 巻2 号 p. 141-151
    発行日: 1981/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イネのトビイロウンカ低抗性の遺伝的基盤を拡げる目的で,世界のイネ品種系統3,287を主として昆虫飼育室内で,野生型ウンカ(バイオタイプI)を用いた集団幼苗検定法により抵抗性検索を行なった。わが国の赤米,香稲を含む各地在来品種,朝鮮半島,台湾,中国,フィリピン,インドネシア,西アジア以西,アフリカ,南北アメリカ,オーストラリアからは抵抗性遺伝子源品種は検索されず,低抗性品種は主にスリランカ,南インドに集中し,北インド,ビルマ,タイに少数発見された。日本在来赤米品種には数日間の幼苗検定で耐性を示すが,長期にわたると弱反応を示すものカミあり,この反応型はアジア各地のイネに広く見られるが,他の地域には見られない。バイオタイプIに対する抵抗性品種系統のうち,抵抗性目的の育成系統を除いて,バイオタイプII(低抗性遺伝子Bph 1をもつ`Mudgo'または育成系統`F8 262'上で継代飼育選抜したウンカ)とバイオタイプIII(遺伝子bph 2をもつ`ASD 7'上で継代飼育選抜したウンカ)で低抗性の再検索を行なったところ,既知の抵抗性遺伝子型の品種は一定の反応型を示した。バイオタイプII,IIIに弱・強,強・弱,強・強の反応型を,それぞれ1,2,3と分類Lたとき,それぞれの反応型.の品種はBph 1品種群,bph 2品種群,およびその他の品種群に属するものと考えられる。
  • 高木 洋子, 生井 兵治, 村上 寛一
    1981 年31 巻2 号 p. 152-160
    発行日: 1981/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    コムギのアルミニウム耐性の早期検定法として,POLLEら(1978)がヘマトキシリン染色法を開発した。この方法の精度を耐性既知の品種を用いて追試し,さらにこれまでアルミニウム耐性や耐酸性が調べられていた日本の品種について,ヘマトキシリン染色法を適用し,メキシコ・ブラジル産品種とその耐性程度を比較した。その結果,ヘマトキシリン染色法は,従来から早期検定法として使われてきた水耕法に匹敵する精度を示し,そのうえ操作が簡便で発芽4日後に検定ができる,多数個体が同時に扱える,検定後の植物が利用できるたど長所があり,コムギ育種の早期簡易検定法として極めて有効であることを確めた。また,供試した日本の品種にはアルミニウム耐性が極強の品種(ヘマトキシリン染色法の評価,1)はなかったが,ヒラキ小麦,農林54号などの4品種はブラジルの耐性品種(評価,3)に匹敵するものであることを明らかにした。
  • 新開 稔, 喜多富 美治
    1981 年31 巻2 号 p. 161-167
    発行日: 1981/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    イネとダイズのカルス細胞からのプロトプラストの分離また液体培地での培養を試みた。イネ系統A-58の細胞質雄性不稔型および正常型,およびダイズ品種ハロソイがプロトプラストの分離および培養に適していることが判明した。両植物のプロトプラストは液体培地中で細胞分裂を開始し,1~2ケ月後にコロニーを形成した。イネのコロニーは寒天培地へ移植することによりカルスを形成した。
  • パークス,クリフォードR , 近藤 勝彦, スウェイン,トニー
    1981 年31 巻2 号 p. 168-182
    発行日: 1981/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    ツバキ属の多数の種と雑種を使って,サザンキン(ユージノール・グリコシド),カメリンI並びにカメリンII(フラボノイド硫酸塩)の分布を調べた。サザンキンは,サザンカ,カンツバキ,バルサザンカ,それら3種の雑種およびジャポニカ系数栽培品種に限って存在した。一方,カメリンは,ヤブツバキ,ヒメサザンカ,カメリア・トランスノコエンシスの観察したすべての個体,サザンカのほとんどの個体,そしてこれら4種の関係する雑種のほとんどに分布がみられた。さらに,ヤブツバキ特有の形質の1つであるコルク流の分布と数的変異についても,サザンカとカンツバキの栽培品種ならびにそれらの自由交雑によりできた子孫を中心に調べた。その結果,それらの変異は大きいことがわかり,異型接合性を示唆していた。以上のことから,サザンカとヤブツバキの種間に遺伝子拡散があることを考察した。
  • 高橋 隆平, 武田 元吉, 林 二郎, 守屋 勇
    1981 年31 巻2 号 p. 183-198
    発行日: 1981/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    わが国の主要な新旧二条大麦品種の農業形質や醸造品質に関する育種的進歩と各形質の肥料反応の品種問差異を知るため本実験を行たった。材料はTable1に示した10品種で,うち8品種は古い外来品種と,交雑により育成された二条種である。たお,比較のため六条の2品種を加えた。施肥量を標準肥(試験地の慣行施肥量)とその半量,11/2倍および2倍量の4段階とし,3反復の分割試験区法により倉敷で比較試験した。また,醸造品質検定は栃木分場で行なった。農業形質では,顕著な育種的進歩が認められた。新しい育成品種ほど著しく短稈,早熟となり(Table3),穂数の増加も顕著である。反面,穂は若干短かく,1穂粒数や千粒重もかなり減少するが,整粒歩合はほとんど旧品種と差がない(Table4,Fig・2と3)。しかし収量やその肥料反応については,品種間に若干の差が認められるが,多肥多収化傾向はみられない。醸造用品種の調査結果(Tables6と7)は,最近の育成醸造用品種の中に麦芽可溶性窒素含量(SN)が高く,また多肥条件でも安定した良質の麦芽品質を維持しているものがあることを示した。しかし少肥条件では外来品種にさらに良質性を示すものがある。調査した諸形質は,肥料と品種との交互作用がごく弱く,大抵の品種はそれぞれの形質について同じ傾向の肥料反応を示した。そこで,諸形質を次の3群に区分することができた(Tab1e9)。(1);増肥にともない逐次増加する形質(収最,1穂数,粒や麦芽の窒素含量など),(2);標準の11/2および2倍量の施肥で逐次低下する形質2(千粒重,収穫指数,麦芽品質評点など),(3);施肥量の多少と関連の少ない形質(1穂着粒数,麦芽収量,最終発酵度など),なお,この結果にもとづき,収量や千粒重と醸造品質に関する諸特性との関係について考察した。
  • 金澤 俊光
    1981 年31 巻2 号 p. 199-202
    発行日: 1981/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
  • 岩永 勝, 坂口 進
    1981 年31 巻2 号 p. 203-206
    発行日: 1981/06/01
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
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