育種学雑誌
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Triticum timopheeviの細胞質で置換した7種のパンコムギ雄性不稔系統における葯の発育異常
A.K. JAINR.K.S. RATHORE木下 俊郎Toshiro KINOSITA
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1981 年 31 巻 3 号 p. 251-260

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抄録
パンコムギの近縁種Triticum timopheeviの細胞質を置換して作成した雄性不稔系統`Nadadores'(米国コロラド州カーギル研究農場産)を細胞質提供親として,インドの在来鼎種6種とそれぞれ交配し,さらに各在来品種を連続戻し交配して6種の雄性不稔系統を育成Lた。これらと原品種`Nadadores'とを用いて,花粉退化に至るまでの葯の発育異常について比較観察を行った。まず,原品種'Nadadores'における葯の発育異常では,(1)時々減数分裂期以前に,タベート細胞の肥大を生じ,花粉母細胞の退化を起こすことがある。(2)大部分の小花で起こる現象として,開花に至るまでタベート組織が崩壊せずに残存する。そのため,小胞子の外皮の発達が抑制され,不完全花粉を生ずる。(3)時には,小胞子形成初期にタベート細胞が放射状に肥大し,小胞子を圧迫して退化せしめる。一方,インド在来品種の核より成る6種の雄性不稔系統でも上記のようなタベート異常を生じたが,その外に,下記の如き異常を生じた。(1)減数分裂期初期にタペート組織の崩壊に伴い,花粉母細胞や花粉四分子が崩壊する。(2)減数分裂期以前または以後の時期に,タペート組織が周辺偽変形体(Pseudo-periplasmoditm)を形成し,小胞子の異常を起こす。
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