育種学雑誌
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小量麦芽製造法とその大麦育種における品質選抜への応用
武田 元吉関口 忠男倉井 耕一瀬古 秀文
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1981 年 31 巻 4 号 p. 414-422

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抄録
1967年に栃木県農試で開発した育種試験用麦芽製造装置に,さらに改良を加えて1978年に新型を作製した。この装置の特徴は;1)浸麦工程と発芽工程を1種類の機器で実施すること,2)試料を静置し,かくはんは手操作に頼ること,3)試料を静置するため,試料容器棚の変更が容易なので,250g製麦(40点同時に製麦),40g製麦(126点)および15g製麦(308点)などの各製麦タイプを1種類の機器で実施できること,4)試料容器を円筒にしたこと,5)各試料の浸麦度をほぼ一定にするため,試料をいくつかのグループに分けて浸麦開始時刻を自動的にずらすことができることなどである(Fig.1)。このうち,4)と5)は1978年に改良した事項である。各製麦タイプに適した浸麦度を明らかにするために,浸麦度を約42%から45%ないし46%まで増加した結果,浸麦度の相違により,250gおよび40g製麦の麦芽エキスには有意差が認められなかった。しかし,その他の麦芽品質は明らかな影響を受け,測定値の総合的な結果から40gおよび15g製麦では,250g製麦よりも低い浸麦度に抑えることが適切であると推定された(Fig.2,Table 1)。また,育種試験の系統適応性検定材料を供試し,250g,40gおよび15g製麦間で品質分析結果の相関関係を調査したところ,麦芽の歩留りを示す麦芽収量率以外の麦芽品質ではかなり高い正の相関関係が認められた(Table2)。さらに,新品種候補系統と比較品種について,250g製麦と民間会社では小量パイロット製麦(1kg)との品質分析結果を比較したところ,両者の間には正の相関関係が認められた(Fig.3)。以上のことから,本報の小量麦芽製造装置を育種試験に利用する際の問題点について考察を行なった
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