抄録
イネ(2n=24)において期待される12の連鎖群は主として日本型の標識遺伝子を用いてNAGA0 and TAKAHASHI(1960,63)により明らかにされた。しかし,その後,相互転座や三染色体植物が用いられるようになって,これまで同一連鎖群に属するとされていた標識遺伝子が別の連鎖群に移動したり,2ないし3連鎖群が合体する可能性のあることが示唆された(IWATA and OMURA 1976)。また一方では,既存のいずれの連鎖群にも対応しない三染色体植物や,その三染色体植物とのF2で三染色体的分離を示す標識遺伝子のあることが明らかにされた(IWATA and OMURA 1975)。そこで,既知の連鎖群とその座乗染色体との対応,あるいは三染色体植物を用いて明らかにされた新しい遺伝子群と座乗染色体との対応関係を明らかにすることが急がれている。ここでは,主として相互転座を用いた分析によって,染色体2,3,4,7に対応する連鎖群を明らかにした。なお,本研究では染色体番号は西村(1961),連鎖群番号はNAGAO and TAKAHAsHI(1960),三染色体植物型はIWATA et al.(1970)の記載にしたがった。 染色体2には,第VI連鎖群に属するd1と第IX連鎖群の nl1,riがともに座乗し,したがって,これらの2連鎖群が1連鎖群を構成するという既往の結果を追認した。 染色体3には第III連鎖群の eg,spl6,lax,d10 が座乗する。これまで所属連鎖群の不明であったd18kも染色体3に座乗し,第III連鎖群に所属する。 染色体4にはA型の三染色体植物とのF2で三染色体的分離を示した spl,fl,rk2 が座乗する。染色体7にはC型の三染色体植物とのF2で三染色体的分離を示した pgl,fl,rk2 が座乗する。扁平粒遺伝子 rk2 はここで新たに記載する遺伝子である。A型およびC型の三染色体植物はいずれも既知の連鎖群とは対応しないことが明らかであるので,染色体4,7に座乗するこれらの遺伝子がそれぞれ新しい連鎖群を構成するといえる。 以上,既報の結果と併せて,染色体12を除く11の染色体について対応する連鎖群が同定されたことになる。