抄録
種間,属間などの遠縁交雑に胚珠培養法を利用することの有効性を検討する目的で,雑種植物が得にくいとされている Nicotiana rustica と N.tabacum の組合せについて胚珠培養法を適用した。交配後の胚珠の組織学的観察ならびに N.rustica の幼胚珠の培養実験の結果から,N.rustica に N.tabacum の花粉を授粉し,5日目に胚珠をとり出し,NITSCH と NITSCH(1969)の無機塩類にビタミン類を加え,庶糖濃度7%とした液体培地で培養した。交配した17花について約2,000個の胚珠を培養した結果,185個体の雑種植物を得ることができた。これら雑種植物では草姿,葉形,花形,花色などに両親の特性がそれぞれ表現されていたが,個体間変異は全くみられなかった。一部について根端細胞の染色体数を調査した結果,いずれも2n=48(両親は共に2n=48)であり,両親のゲノムを完全に合せ持っていると考えられた。本実験の結果は,この組合せに関して報告されている交雑結果と比べて,格段に効率が勝れている。したがって,この組合せのように,胚珠の退化によって雑種植物が得られない遠縁植物間の交雑に胚珠培養法を適用することは極めて有効であると考えられた。