抄録
本試験はバレイショ品種の育成をより効率的に行うための基礎資料を得るために,43品種を用い,異なる施肥条件(少肥,標肥,多肥区)で実用形質の遺伝母数を推定するとともに,形質相互間の関連性,でんぷん収最に寄与するでんぷん収量構成形質の役割,および各施肥条件に最適な品種の間接選抜の効果について検討した。施肥量の差異によって,実用形質の遺伝および環境分散,遺伝変異係数,ならびに遺伝率は変異した。したがって,遺伝的な変異の発現が大きく,遺伝率が増加し,選抜効率が向上する施肥条件としては,上いも数,上いも収量およびでんぷん収量では少肥区,一個重では多肥区,でんぶん価では各施肥区であった。また,施肥量が増加すると,でんぷん収最と上いも数および上いも収最との間,上いも数と上いも収量との間の遺伝および表現型相関は減少するが,一個重と上いも収量およびでんぶん収量との間のそれは増加する傾向が認められた。そして,でんぷん収量に寄与するでんぶん収量構成形質の直接および間接効果の割合は,施肥条件で異なり,直接的には少肥区および標肥区で上いも数が,多肥区で一個重が最も大きかった。また,間接的には各施肥区で各形質とも負の作用をしていることが明らかになった。各施肥条件に最適な品種を施肥量の異なる条件下での間接選抜が可能かどうか検討した結果,大きな間接選抜の効果を示す施肥量は認められなかった。しかし,いくつかの形質では間接選抜が直接選抜と同程度の選抜効果を示し,間接選抜の有効性が認められた。