抄録
パラフルオロフェニルアラニン(PFP)によるブドウの染色体数の変異誘起の特徴を明らかにするため,フェニルアラニン誘導体及びアミノ酸アナログを,種子の発芽期に処理し,根端細胞における変異を比較した. フェニルアラニン関連物質のうち,フェニル基を修飾したPFP,バラクロロフェニルアラニン,パラブロモフェニルアラニン,パラアミノフェニルアラニン,パラニトロフェニルアラニンで染色体数変異の誘起効果が確認された.フェニル基を置換したβ-2-チエニルアラニン,及び,アラニル基を修飾したα-メチルフェニルアラニンでも変異が誘起されたが,フェニルアラニン及びチロシンでは変異はみられなかった(Tab1e1). フルオロフェニルアラニンの3つの構造異性体を検討した結果,PFPとともに,メタフルオロフェニルアラニン及びオルトフルオロフェニルアラニンも染色体数の変異を誘起した.しかし,PFPの立体異性体の比較では,D-PFPには効果が認められず,染色体数の変異誘起には,L-PFPが有効であることが示された.さらに,PFPのアミノ基を修飾し,N-アセチル-PFPにした場合,変異の発作はみられなかった(Table2). ほかのアミノ酸のアナログ8種類について比較した結果,メタフルオロチロシン及び5-フルオロトリプトファンが,PFPと同様に染色体数の変異を誘起した(Tab1e3).