育種学雑誌
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野生サザンカにみられる変異性と栽培品種分化
近藤 勝彦鶴田 幸一田中 昭男目詰 雅博吉岡 寿SECMEN O
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1986 年 36 巻 4 号 p. 340-354

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抄録
野生サザンカの葉や花の変異性やデモグラフィーの調査をおこない,栽培品種分化に最も関与していると考えられる地域個体群または個体の分析を試みた。その調査地点として,四国地方南西部,九州地方沿岸部,そしてヰ国地方山口県萩市指月山の分布域内において,69個所を選んだ.人為干渉の少い常緑広葉樹林中では,野生サザンカはまばらに生えており,樹高10mまで伸びて林冠に達し,胸高直径は最大46cmまでになり,樹令は平均125年であった.これに対し,薪炭林,人工造林,竹林となったために人為干渉の高い生育地では,伐採後再萠芽した株がほとんどであり,根株は直径75cmまでに達するものが多かった.したがって,それらは,樹高2mm以下,幹の直径2cm以下,樹令平均10年、地上部の同化器官乾物重量平均246.3g,非同化器官乾物重量平均1,869.2gの稚樹であった.一方,人工造林地の中にも,まれに,故意に切られずに,残されて,生長を続けてきた高木個体がみられた・全調査地点で得られた個体は,すべて六倍体(2n=90)であり,それ以外の染色体数をもつ個体は1本も見つからなかった.着花は,林内相対照度12%以下の生育地では全くみられなかった.種子は10月下旬~11月中旬までに散布され,そのうちのいくらかは12月初~中旬に発芽を始めたしかし,その後は発芽個体数に増減がくり返されたものの,林内相対照度12.1%では,6月中旬までに生き残った実生はほんのわずかであった.これに対し,日照条件のよい場所では,散布種子の約半数が春までに発芽した後,実生となった個体は夏までそのまま生育した.
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