抄録
葯培養によって得られたタバコの半数体倍加系統に見られる高頻度の遺伝的変異の成因の一つとして,コルヒチン処理による染色体数倍加過程の影響を検討した. 黄色種タバコ品種 Bright Yellow 103(BY 103)の1個体から葯培養によって約2,500個体の植物体を誘導した.この中から,自然に染色体を倍加したと思われる38個体の稔性個体を得,これらを自殖して自然倍加系統とした.残りの半数性植物体約200個体について,花序浸漬法によるコルヒチン処理(0.2%,48時間)を行ない,65個体で倍加種子を得た.一方,1個体の葯培養母木を2回自殖して,100系統の自殖系統を作成した.これら3種類の系統群,すなわち,自然倍加,コルヒチン倍加および自殖系統からそれぞれ30系統を任意に選抜して,圃場試験の供試材料とした.合計90系統を3回反復,乱塊法により配置し,開花期に全個体について,開花日数,草丈,全葉数,葉長および葉幅,全系統について収量およびアルカロイドタイプに関する調査を実施した.