育種学雑誌
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日本のハマダイコンの葉形に見られるクラインと集団内変異
山口 裕文
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1987 年 37 巻 1 号 p. 54-65

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抄録

栽培植物の野生系統や雑草性系統の多様性の解析は在来品種の変異の由来の理解の手助けとなる.ダイコンが野生化したと考えられているハマダイコン(Raphanus sativus L. var. raphanistroides MAKINO)の根生葉はふつう羽状全裂(Pinnatifid:本文ではPFと略す)であるが,時に,頭羽状で切れ込みの無い葉(Lyrate:LY)や再羽状に深裂する葉(Pinnatisect:PS)が見られる(Fig,1).葉形に関する地理的変異性を明らかにするために,東京大学,東京都立大学,京都大学および国立科学博物館所蔵のハマダイコンの=葉標本および日本各地の15の自生地から集めた種子より育成したハマダイコンと,13の自生地におけるハマダイコンを調査した(Table1). ハマダイコンは日本列島に広く分布し,北海道から韓国,台湾.硫黄島の磯浜のほかに東北地方の内陸と琵琶湖の浜に分布する(Fig.2).=葉標本では頭羽状葉は日本列島の4ヶ所から,再羽状深裂葉は済州島から発見された.種子を用いた育成実験では頭羽状葉は14の地域個体群で0.1%から24.9%の頻度で出現し,再羽状深裂葉は1地域個体群から0.58%の頻度で出現した(Table3).自生地では総ての地域個体群で頭羽状葉が見られ,その頻度は0.03%から21.96%であった(Table4).再羽状深裂葉は調査の対象とした地域個体群からは発見されなかった.

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