育種学雑誌
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Glycine 亜属植物の Kunitz トリプシンインヒビター様タンパク質の比較
中村 郁郎海妻 矩彦蓬原 雄三
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1987 年 37 巻 2 号 p. 170-176

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抄録

Glycine亜属植物の類縁関係を解明するため野生種の種子に含まれるKunitzトリプシンインヒビター様タソバク質(KTILP)の電気泳動法により識別できる易動度,KTILPの2成分,S,Fの量比及び分子量の変異を比較検討した。その結果,これら3つの特性のたかでは分子量の種内変異が最も小さく,種問の類縁関係を反映すると思われた.2次元電気泳動分析の結果,Glycine亜属4種21系統のKTILPは分子量の差によって7タイプの泳動パターンに類別された.G.latifoliaおよびG.tabacinaはそれぞれ2および3タイプのパターンが出現し,種内に変異が認められ,一方,G.clandestinaでは種内変異が認められたかった.G.latifolia, G.tabacina, G.canescens,の3種で同じタイプのバターンを示す系統が認められたことはGlycine亜属植物の種分化を考慮する上で興味深い.また,G.tabacinaにおいて2組のSおよびFタンパク質を持つ2系統が認められたことは,Glycine属において複二倍体化による進化の道筋があることを示唆している. KTILPの易動度およびS/F量比の変異を比較した結果は,分子量の変異を比較した結果と同じような種間の類似性を表した.

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