育種学雑誌
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Ipomoea trichocarpa ELL.の葉カルスからの植物体再分化
大谷 基泰島田 多喜子
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1988 年 38 巻 2 号 p. 205-211

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抄録
サツマイモ(Ipomoea batatas(L.)LAM.)の近縁野生種であるIpomoea trichocarpa ELL.の葉カルスからの植物体再分化の条件を検討した。I. trichocarpaの葉外殖片を0.5mg/l 2,4-D、5mg/l abscisic acid(ABA)、3,000mg/l yeast extract、5% 蔗糖、O.2% Gellan Gumを含むLS培地上に置床してカルスを誘導した。これらの葉カルスを種々の濃度のIAA(0~0.5mg/l)とBA(0~15mg/l)を組み合せた再分化培地上に移植した。葉カルスからの不定芽形成は再分化培地中のBAの濃度が高くなるにつれて、その形成率も高くなった。BAを10mg/l単独で添加した培地が最も高い不定芽形成率を示し、置床したカルスのうち20%が不定芽を形成した。一方、葉カルスからの不定根の分化は培地中の植物ホルモンの種類や濃度に関係なく、用いた全ての種類の再分化培地で高頻度に分化した。再分化培地上で葉カルスより分化した不定根をカルスとともに植物ホルモンを含まないLS培地(O.2% Gellan Gum)に移植することによって不定根からきわめて高い頻度(63.3~90.6%)で苗条が形成された。苗条を形成した不定根は全て直径が約1mm以上の太い根であった。このことから、葉カルスより分化した不定根のうち、その直径が比較的太い根(太根)には、すでに不定芽の原基が形成されていると考えられた。葉カルスより分化した不定芽および葉カルス由来不定根より形成された苗条はその後も生長を続け発根し幼植物体になった。これらの幼植物体をさらに植物ホルモンを含まないLS培地(0.2% Gellan Gum)に移植して十分に生育させたのち、バーミキュライとパーライトを等量混合したビニールポットに鉢上げして健全な植物体を得た。これらの鉢上げした再分化植物71個体のなかでは形態的な変異は観察されなかった。
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