抄録
普通ソバは異型花柱性の自家不和合性で,有用な遺伝子型を効率的に維持,増殖することが困難である.そこで組織培養による増殖法の確立を目的として,幼花序からの植物体再生について検討した.普通ソバおよび宿根ソバの幼花序をNAA,2,4-DおよびBAを含んだB5培地で培養した.普通ソバではNAA0~2.O+BA O~2.Omg/l添加で幼花序から直接不定芽が生じ,特にNAA O・2+BA1・Omg/l添加区で最高の分化率を示し,岩手在来秋ソバで40.O%,階上早生で47.6%の不定芽形成がみられた(Table1,Fi9・1A).宿根ソバはNAA1.O+BA1.0mg/l区でのみ不定芽が生じ,その頻度も低かった(Table2).一方,両種ともNAA2.0mg/l以上あるいは2,4-D1.Omg/l以上の添加により高いカルス形成率を示した.これらのカルスをホルモン無添加あるいはNAA0.2+BA 1.0mg/l添加の再分化培地に継代したところ,普通ソバでは17.5~28.6%の頻度で芽を分化したが,宿根ソバではまったく分化しなかった(Tab1e3,Fig.1B).幼花序から直接分化した場合も,カルス経由の場合も,芽をIBA1.Omg/l添加のMS培地に移手直し発根させた(Fig.1C).幼花序から直接再生した植物体のうち,普通ソバ25個体,宿根ソバ1個体について染色体数を調査したところ,すべて2n=16の2倍体であった.