育種学雑誌
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ハマアカザ属種間雑種,(A. rosea(C4A. patula(C3))×A. rosea,に出現したC4様植物
力石 和英小黒 仁司鮫島 宗明杉山 達夫日向 康吉
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1988 年 38 巻 4 号 p. 397-408

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抄録
C3・C4光合成の遺伝を研究する目的で,アカザ科・ハマアカザ属のAtriplex rosea(C4,n=9)×A.patula(C3,n=18)の種間交雑を行ない,更にそのF1にA.roseaを戻し交雑して3個体の植物を得た(BC1-1,-2,-3).これら3個体のうち,BC1-1および-3の2個体は,維管束鞘細胞数,柵状組織細胞密度がC4親に似ており,また炭素同位体分別値(δ13C)と炭酸ガス補償点もC4親に似ていた(Fig.1).C4光合成関連酵素活性もC4親に類似していた(Tab1e1).一方,BC1-2はこれらの形質に関して,A.patulaに似ていた. 1985年にこれら個体の自殖種子を無菌的に発芽させたところ,鉢に移植出来た個体はすべてC3型の光合成を示した(後述するp型とd型のみであった).しかし,発根せずに培養瓶中で開花結実に至ったものが,BC1-1Sに7個体,BC1-3Sに2個体あった.1986年には,培養方法を改良して,これらの種子から植物体を育成したところ,A.roseaに似た植物が得られた(Table2). これら戻し交雑後代は,その草姿から不連続な3型に分類出来た.P型はA.patulaに類似し,細く長い分枝を付ける.d型はわい性で分枝が少なく,葉の形は両親種の中間型で,葉色が濃い.r型はよく分枝し,生育も旺盛であり,葉形はA.roseaに似ていた(Fig2).たおr型はすべて無菌培養瓶の中から得られたものであった.また,1985年にP型とされたものからd型が分離する場合もあり,d型からP型が分離することもあった(Table2).
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