育種学雑誌
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水稲のV字型葉の光合成特性とその遺伝
笹原 健夫崔 成煥瀬野 幸一
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1989 年 39 巻 1 号 p. 15-22

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抄録
アルボリオと大黒1号の交雑後代系統に密陽23号を交配した後代から,葉身が中肋を中心として内側に向かってV字型を形成する系統が選抜された.このV字型葉身は,内側から照射した場合,その投影面積当たりの光合成速度が祖先品種(アルボリオ,密陽23号)より有意に高い単位投影葉面積当たつ光合成速度を示した.ただし,V字型葉身を水平葉面積に変換した場合の単位葉面積当たり光合成速度は祖先品種よりやや高い傾向を示すのみであった.このことは,V字型葉身の状態で水平葉面積に変換した場合の単位葉面積当たり光合成速度を維持していることを示しており,V字型にすることによる葉面積の減少によって相互遮蔽を減少させつつ高い光合成速度を示す群落を構成し得る可能性を示している。ただし,水平葉と比較してV字型葉は直達光を受ける場合余弦曲線に比例して受光面が減少する不利な面を有している. 水平葉面積に変換した場合の単位葉面積当りV字型葉身の窒素含量及びV字型葉身の厚さ(=平均断面積/葉幅)は祖先品種とほぼ同じ値を示した.ただし,両形質ともいくつかの場合で有意の差異が見られた. V字型葉身の特性を有する系統(群)はなお出穂期,脱粒性などいくつかの農業実用形質に関して若干の分離を示すが,V字型葉身の特性そのものは劣勢の単因子によって支配されていると推定された.
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