抄録
植物の高密度ストレスに対する適応の機構を解明するために,カラシナ(Brassica juncea CZERN.et COSS.)の高密度ストレス条件下で世代を重ねた集団(H型)と高密度ストレスのない条件下で世代 を重ねた対照の集団(L型)の単植と混植実験を異なる密度条件下でおこなった.H型はL型より種子サイズが大きく,早く開花した.高密度条件下では,生育初期に自己間引きが生じたが,その過程(発芽から約30日まで)の生存率は,混植によりH型は増加し,L型は減少した.自己間引きの過程の混植区では,高密度ストレスのもとで生存した個体の後代であるH型の個体が,L型の個体との生存競争に勝って生き残る確率が大きいことが明らかになった。栄養生長量および生殖生長量においても,密度の増加により競争効果が大きくあらわれ,H型がL型に対し強い競争力を示した.したがって、高密度ストレスのもとで世代を重ねたカラシナの集団(H型)は,生育初期に旺盛な栄養生長をおこなう,競争力の強い遺伝子型で構成されているものと思われる.