育種学雑誌
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7Sグロブリンのサブユニット変異遺伝子による大豆タンパク質の改良
小川 泰一田山 栄子喜多村 啓介海妻 矩彦
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1989 年 39 巻 2 号 p. 137-147

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抄録

毛振×F1(大館1号×秣食豆 公503号)の交雑により自殖ホモ後代系統「7S低下系統」が得られた.この7S低下系統は,α-欠失,α-低下,β-低下遺伝子を合わせ持つことにより,種子タンパク質の主成分である7Sグロブリンのα'-サブユニットを欠失し,αとβの両サブユニットの生産量が大きく低下している.本研究では,これらの変異遺伝子が集積されたことによる諸形質への影響を,この7S低下系統と普通品種とを比較し検討を行った.全種子タンパク質中の7Sグルブリン含量は,7S低下系統では普通品種の約半分にまで低下していたが,一方,11Sグルブリン含量は約ユ4%増加していた(Table2).また,種子申の全タンパク質含量は,7S低下系統の方が有意に高く(Table2),さらに,完熟子葉細胞中のプロテインボディにも,形態的な以上は見られなかった(Fig.4).52の測定値から両グロブリン間の相関を調べたところ,有意に高い負の相関が認められ(r=-0.84,PO.001),その回帰曲線の傾きの絶対値は1よつわずかに大きかった(a=-1.5)(Fig.3).これらの結果により,α'-欠失,α-低下,β-低下遺伝子を集積させた場合には,7Sグロブリン生成量には大幅な低下が生じるが,11Sグロブリン生成量の増加がその低下分を補い,種子中の全タンパク質の生成量を保持させると考えられた.全タンパク質のアミノ酸組成分析の結果,7S低下系統4系統の総含硫アミノ酸含量(半シスチン+メチオニン)の平均値は普通品種4品種の平均値の約1.2倍の値を示した(Table3).

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