育種学雑誌
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ハクサイ (Brassica campestris ssp. pekinensis)の葯培養における胚形成能の品種間差
佐藤 隆徳西尾 剛平井 正志
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1989 年 39 巻 2 号 p. 149-157

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抄録

わが国の代表的なハクサイを中心とするBrassica campestrisの9品種及び捲心群に属するハクサイ3品種を用い,、葯培養における胚形成能の品種間差について検討した.また,アブラナ科作物の葯培養において最もよく研究されているBrassica napusの2品種を対照として用いた.B. campestris及びB. napusの菊を修正B5(KELLER and ARMSTR0NG 1979)培地に置床後ただちに30℃・14日間の処理を行ない,引き続き25℃で培養した結果,培養1ケ月ではいずれの品種においても胚の形成はほとんど見られなかった.(Table1).一方,35℃・1日間の処理では多くの胚を形成し,更に胚形成能における明確な品種間差が認められた.B. campestrisの中では,捲心群に属する'亜蔬1号'が極めて効率良く胚を形成した(Table2,Fig.1).しかしB. napusでは,30℃・14日間及び35℃・1日間のいずれの処理も,豚形成には効果的でなかった(Table1,Table2).そこで,`亜蔬1号'の他に捲心群に属するハクサイ3品種について,35℃・1日間の処理を行ない、葯培養における胚形成能を比較した.その結果,捲心群に属するハクサイの中には,1,000葯を培養した場合に得られる胚の数(効率)が10,000以上を示し,`亜蔬1号'より胚形成能がまざる品種がみられた.(Table3).本研究の結果,ハクサイにおいて,葯培養の胚形成能における品種間差が明らかとなつ,捲心群に属する品種では最も高い胚形成能を示すことが明らかとなった.この特性を他のハクサイ群に導入することができれば,葯培養による半数体育種法をハクサイにも適用することが可能と思われる.

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