抄録
10種類のイネ雄性不稔細胞質歯来のミトコンドリアにおける,プラスミド様DNAの存在様式,その形状,プラスミド様DNA間の塩基配列の相同性,およびトウモロコシで発見されているプラスミド様DNAとの塩基配列相同性などについて調べた.暗黒下で発芽・生育した幼苗よりミトコンドリアDNAを抽出した後,0.7%アガロースゲル電気泳動を行ったところ,cms-R細胞質では1.09と0.96kbの2種類のプラスミド様DNA分子が観察された.また cms-UR106細胞質では1.60,1.09,0.96kbの3種類のプラスミド様DNA分子が観察された.他の8種類の細胞質,cms-Bo,cms-UR89,cms-UR93,cms-UR102,cms-UR104,WA,cms-Gam,MS-577では,1.60,1,25,1.09,0.96kbの4種類のプラスミド様DNA分子が観察された.これらの雄性不稔細胞質の供与体であるOryza rufipogonやOryza nivaraの細胞質は,プラスミド様DNAの存在という観点からすると(KADOWAKI ei al.1988b),日本型イネ細胞質よりもインド型イネ細胞質に進化的に近縁であると推定された. cms-Bo細胞質で観察される1.09kbDNA分子は,ミトコンドリアを単離した後,phenol/chloroform抽出前にproteinase K処理を行ったときにのみ回収できることから,トウモロコシのS1,S2DNAと同様の,タンパク質結合部位をもつ線状DNA構造であることが示唆された.他のプラスミド様DNA分子は環状DNA構造であるとみなされた.