育種学雑誌
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親子相関および選抜反応から推定したイネの粒大に関する遺伝率
加藤 恒雄
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1990 年 40 巻 3 号 p. 313-320

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抄録

イネの粒大に関する選抜効率についての情報を得るため,イネの粒長と粒幅の狭義の遺伝率を種々の交配組み合わせに由来する分離集団を用いて推定した. BG 1,Arborio J1(大粒型),たいほう(中間型),中生新千本,コシヒカリ(小粒型),以上5品種間で片面総当たり交配をおこない,得られた10組み合わせの各々についてF250個体を無作為抽出し,F2個体別F3系統を育成した.これらF2親値とF3系統平均値の相関係数を求め遺伝率の推定値とした.得られた遺伝卒の平均値は粒長で0.800,粒幅で0.555となった.粒長の遺伝率はほとんどの組み合わせにおいて粒幅の遺伝率よりもやや高くなった(Table1,Fig.1,Fig.2).また,粒長,粒幅ともに,遺伝率とF2の遺伝分散との間に正の相関が見られた(Fig.3). 上記10交配組み合わせ中の4組み合わせについてはF5世代まで無作為選抜集団を育成し,各世代間の親子相関係数を求め,世代の推移による遺伝率の変化を検討した.その結果,どの組み合わせでも遺伝率は世代によって大きく変化しなかった(Table2). 上記の無作為選抜実験と平行して,他の4交配組み合わせのF2において粒長に関する選抜をおこない,選抜反応と選抜差から遺伝率を求めた.その結果は親子相関の方法で得られた値と近似していた(Table3). 以上の結果から,イネの粒長および粒幅の狭義の遺伝率は種々の交配組み合わせに由来する分離初期世代集団において一般的に他の農業形質に比べて高いことが明らかになった.これら形質については,F2世代でも選抜が有効であると考えられる.

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