抄録
日本国内で栽培されているヤマモモ(Myrica rubra SIEB.et ZUCC.)の26品種36個体を7ヵ所から採取し,アスパラギン酸アミノ転移酵素(GOT)とパーオキシターゼ(POD)のアイソザイム分析を行った.分析材料の採取時期並びに採取部位について比較した結果,両酵素共,展開中の葉芽を用いた場合に安定した強い酵素活1性がみられ,また多くのバンドを検出できた(Fig.1).GOTでは,遺伝子座と考えられる二つの領域において多型が観察され,それぞれGOT-1およびGOT-2とした(FIG.2).GOT-1では16個体がI型で,17個体がII型に分かれ,GOT-2では25個体がホモ,11個体がヘテロのバンドパターンを示した.PODでは遺伝子座と一思われる一つの領域で多型がみられ,POD-1とした(Fig.3).POD-1で23個体はホモ,13個体はヘテロのバンドパターンとなった.両酵素の分析結果(Table 1)から,5力所から採取した“瑞光"や,3力所から採取した“阿波錦"で採取場所による違いはみられなかった.しかし,“中山"や“亀蔵"において,類似した品種名が付けられているものや,導入経路が違うものでバンドパターンに違いが観察され,これらでは同名異品種の存在が示唆された.また,“阿波錦"と“鬼団子",“森口"と“竹内"は全く同じパターンとなり,形態的な共通性からもそれぞれ異名同品種.であると考えられた.さらに,中国原産とされる“瑞光"と“揚梅"は,2酵素の結果を組み合わせることにより,本邦産の他の品種と識別することができた.