世界各地のイネ品種における白菜枯病抵抗性遺伝子の分布を調べる目的で,まず変異の多様性中心に含まれるミャンマー由来のイネ品種についてフィリピン産白菜枯病菌レースを接種検定し,その反応型による分類を行った.IRRI保存のミャンマー由来1473品種を供試し,フィリピン産白菜枯病菌レース1,レース2,レース3,レース4を幼苗期接種(せん葉接種)し,病班長の伸展から抵抗性(R),感受性(S),中度抵抗性(M)を判別した.その結果,337品種にSRSS,RSSM,RRSM,RRRM,MMMMの5種類の反応型を認めた.これらの反応型を示した品種を成稲期に接種し,反応型を確認した.上記4レースに加え,レース5,レース6も用い,雨期,乾期と異なる季節での接種検定から反応型を確認した.また,各抵抗性を支配している遺伝子の安定性を分散分析により推定した.その結果,主としてMMMM反応型の218品種は感受性と判定され,残る119品種の反応型は,幼苗期のそれとよく一致し,準同質遺伝子系統の反応型をテスターとして比較するとSRSS型はIR-BB10(Xa-10)にRSSM型はIR-BB4(Xa-4)に、RRSM型はIR-BB4とIR-BB10の重複型に,また,RRRM型はIR-BB5(xa-5)の反応型に相似であることがわかった.MMMM型はさらにRRRR(褐変反応型)と中度抵抗性型品種群に分類され,RRRR(褐変反応型)は,IR-BB3(Xa-3)の反応型とよく一致した.小川ら(1991)の分類に従い,IR-BB10型をCAS209品種群,IR-BB4型をTKM6品種群,IR-BB4とIR-BB1Oの重複型をMond Ba品種群,IR-BB5型をDZ192品種群,そしてIR-BB3型をJava14品種群に分類した.中度抵抗性品種群は分類できない群として仮にnon-ciassified(NC)品種群と分類した.分散分析の結果から季節変動を環境因子に,品種群間差を主動遺伝子による変動とし,さらに品種群内変動を品種の遺伝的背景による差であると仮定すると,抵抗性遺伝子の効果は,50%から80%と高く,環境因子の変動は7%から26%と低かった(Table 2).品種群別にはCAS209,DZ192群の抵抗性CASは安定しておつ,TKM6,NC品種群は比較的不安定であったが,反応型による差は品種群内変動にきれいに現れ,反応型から分類した品種群は正しく分類されていると考えられた.ミャンマー由来品種は,44(37%)品種がCAS209群(Table 3),33(28%)がTKM6群(Table 4),4品種がMond Ba群(Table 5),9品種がDZ192群(Table 6),3品種がJava14群(Table 6)に分類され,26品種が中度抵抗性品種群(MMMMM)として分類され(Table 7),CAS209優先型の分布が特徴的であった.
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