育種学雑誌
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41 巻, 2 号
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  • 半田 高, 梶浦 一郎
    1991 年41 巻2 号 p. 203-209
    発行日: 1991/06/01
    公開日: 2008/04/18
    ジャーナル フリー
    日本国内で栽培されているヤマモモ(Myrica rubra SIEB.et ZUCC.)の26品種36個体を7ヵ所から採取し,アスパラギン酸アミノ転移酵素(GOT)とパーオキシターゼ(POD)のアイソザイム分析を行った.分析材料の採取時期並びに採取部位について比較した結果,両酵素共,展開中の葉芽を用いた場合に安定した強い酵素活1性がみられ,また多くのバンドを検出できた(Fig.1).GOTでは,遺伝子座と考えられる二つの領域において多型が観察され,それぞれGOT-1およびGOT-2とした(FIG.2).GOT-1では16個体がI型で,17個体がII型に分かれ,GOT-2では25個体がホモ,11個体がヘテロのバンドパターンを示した.PODでは遺伝子座と一思われる一つの領域で多型がみられ,POD-1とした(Fig.3).POD-1で23個体はホモ,13個体はヘテロのバンドパターンとなった.両酵素の分析結果(Table 1)から,5力所から採取した“瑞光"や,3力所から採取した“阿波錦"で採取場所による違いはみられなかった.しかし,“中山"や“亀蔵"において,類似した品種名が付けられているものや,導入経路が違うものでバンドパターンに違いが観察され,これらでは同名異品種の存在が示唆された.また,“阿波錦"と“鬼団子",“森口"と“竹内"は全く同じパターンとなり,形態的な共通性からもそれぞれ異名同品種.であると考えられた.さらに,中国原産とされる“瑞光"と“揚梅"は,2酵素の結果を組み合わせることにより,本邦産の他の品種と識別することができた.
  • 小川 紹文, 山元 剛, KHUSH Gurdev S, 苗 東花
    1991 年41 巻2 号 p. 211-221
    発行日: 1991/06/01
    公開日: 2008/04/18
    ジャーナル フリー
    イネ白菜枯病菌レースの国際判別品種を設定するため,抵抗性遺伝子を一つずつもつ準同質遺伝子系統を育成する前提として,日本とIRRIの判別品種の抵抗性遺伝子の同定を行っている.本報では,IR8についての分析結果を報告する.イネ品種IR8はIRRIの判別品種の一つで,全てのフィリピン産白葉枯病菌レースに対して感受性を示す(Table!).一方,日本産白菜枯病菌レースIB,II,IIIA,Vに対して抵抗性を示すが,レースIA,IIIB,IVに対しては感受性を示す(OGAWA1983,OGAWA and YAMAM0T01987b).本研究ではまず,このIR8と同様な反応型を示す品種に,日本産白葉枯病菌レースIA,IB,II,IIIA,IIB,IV,V及びインドネシア産白葉枯病菌レースIV,Vを接種して反応型を比較した.しかし,日本産白菜枯病菌レースV(H75373)は他の研究者の結果(YAMADA et al.1979a,1979b,OGAWA and YAMAM0T01987a,1987b)と同様に他のレースと比較して病原力が弱く,このレースに対する品種の抵抗性の判定は困難であった.一方,インドネシア産白葉枯病菌レースVは,病原力が強かったが,IR8型の反応を示す品種は,全て明らかな抵抗性を示した(Table2).また,これらの品種は,日本産白菜枯病菌レースIVに対しては感受性を示すが,インドネシア産レースIVに対しては抵抗性を示した.従って,日本産白葉枯病菌レースIVは,インドネシア産レースIVと同じレースとはいえず,両レースには病原性の分化があると結論した.
  • 陳 蘭荘, 今西 茂
    1991 年41 巻2 号 p. 223-230
    発行日: 1991/06/01
    公開日: 2008/04/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,前報(IMANISHI et al.1985:IMANISHI,1988)で報告した栽培種とL. chilense問の種間交雑におけるin vitro胚珠培養法をL.peruvianumとの種間交雑に適用し,その有効性を確かめ,交雑親和性の栽培種間差異や野生種問差異を明確にするために行った.そのため,種子親として4栽培品種,花粉親として'peruvianumsomplex'の3系統,すなわち,L.chilense2系統とL.peruvianum1系統を用い,全組合せの交雑を行った,成熟した交雑果から取り出した胚珠には正常な種子は全く含まれていなかった.しかし,IMANISHI(1988)に従って,水洗した胚珠を消毒後肉眼観察すると,やや大きく,狐色をし,やや丸みを帯びた,発芽力を有するように見える胚珠がわずかに含まれていて,それらを明瞭に識別できた.発芽力をもつ胚珠中の胚の形態を知り,それによって胚珠の肉眼選抜の有効性を示すため,Early Pink とL.chilense(P1128652)の組合せについて,非常に多数の胚珠の中から発芽力を有すると推定される30個の胚珠を肉眼選抜し,それらを実体顕微鏡下で解剖した.そして,不完全な胚ではあるが23個の生きた胚を取り出すことができた.それらは1個を除いて胚の発育初期に相当する,少し異常な形態をした胚であった.さらに,発芽力をもつ胚珠を高い確率て憧抜できることを実際の発芽卒で示すため,全組合せの各々において,肉眼観察でより発芽力を有すると思われる胚珠を順番に選抜し,その順に植物ホルモン抜きのMS寒天培地に置床して培養した.その結果,発芽力を有する胚珠を高い確率で選抜できることが確かめられ,この肉眼選抜法がL.peruvianumにも適用できることが分かった.
  • 石本 政男, 喜多村 啓介
    1991 年41 巻2 号 p. 231-240
    発行日: 1991/06/01
    公開日: 2008/04/18
    ジャーナル フリー
    インゲンマメ種子に含有されるα-アミラーゼインヒビター蛋白質(CBAI)は,アズキゾウムシやヨツモンマメゾウムシの生育を強く阻害することから,耐虫性因子として作用していると考えられる.本研究では,CBAIを欠失したインゲンマメ品種を探索し,その欠失の遺伝様式を検討するとともにCBAI欠失品種におけるアズキゾウムシの生育を調査した.インゲンマメ212品種について,抗CBAI血清を用いた免疫二重拡散法によつCBAIの有無を調査したところ,大福-5と大福-8の2品種は抗CBAI血清と沈降帯を形成せず(Fig.1),ブタ膵臓由来のアミラーゼ活性を阻害しなかった.これら2品種は,CBAIと同時にレクチンを欠失していた(Fig2).大福-5×大正金時(正常型)の交配後代のF1及びF2の分析から,CBAIの欠失が単-劣性遺伝子支配であり,レクチンの欠失と密接に連鎖していることが確認された(Table 1).
  • 村井 正之, 広瀬 昌平, 佐藤 茂俊, 武部 正樹
    1991 年41 巻2 号 p. 241-254
    発行日: 1991/06/01
    公開日: 2008/04/18
    ジャーナル フリー
    d-47(t)(低脚烏尖優性),sd-1(4-47(t)と同一座の綾性遺伝子),d-18k(小文玉錦優性)およびd-35(t)(短銀坊主綾性)が穂孕期の耐冷性に作用を及ぼすか否かを調べた.供試系統としては,しおかりを反復親としたd-47(t),d-18kおよびd-35(t)に関する同質遺伝子系統,sdー1を有するCalrose76ならびにその現品種Calrose,小文玉錦と玉錦,ならびに,台中65号を反復親としたd-47(t)に関する同質遺伝子系統(d-47(T65)系統と略称)を用いた(Table 1).12℃3日もしくは4日,13℃4日もしくは6日の低温処理を,人工光または自然光の人工気象室にて行った.
  • 彭 俊華, 石井 潔, 鵜飼 保雄
    1991 年41 巻2 号 p. 255-264
    発行日: 1991/06/01
    公開日: 2008/04/18
    ジャーナル フリー
    遺伝子型と交互作用をもつ環境要因のうち,施肥水準は実験的に制御しやすい要因である'そこで量的形質の選抜に有効な施肥条件についての情報を得るために,IndicaおよびJaponica各10品種のイネを材料として,量的形質の遺伝的変異性が窒素施肥水準によってどの様に変化するのかを調べた.尿素月目料を窒素(N)源として用い,0,35,70,105kgN/haのP2O5および80kg/haのK2Oとともに与えた.実験配置は,Nを主要因とする3反復の分割区法を用いた.草丈,到穂日数,最高分げつ数,穂数,有効分げつ割合,総小穂数,穏当たり稔実小穂数,稔実歩合,1000粒重,株当たつ粒重,生物学的収量(株当たり地上部乾物重),収穫指数の12形質を調査し,これらの形質の平均,平方和,分散成分,広義の遺伝卒に対する窒素水準の影響を調べた.
  • 石川 隆二, 森島 啓子, 木下 俊郎, 原田 竹雄, 新関 稔, 斎藤 健一
    1991 年41 巻2 号 p. 265-272
    発行日: 1991/06/01
    公開日: 2008/04/18
    ジャーナル フリー
    イネ連鎖地図において9種のアイソザイム遺伝子(Table 1)の位置を決定するために,すでに地図上の位置が知られている標識遺伝子との連鎖分析を行った.なお染色体番号は第2回国際イネ遺伝学シンポジウムで承認された番号を用いて,従来の連鎖地図との比較が行えるように対応する連鎖番号を付記した.Acp-1とPox-2は染色体12(d-33連鎖耕)上の標識遺伝子,d-33(矮性)と連鎖していた.Acp-1とd-33の両遺伝子間の組換価は,29.2%てあり,Pox-2とd-33の遺伝子間では7.6完の組換価を示した.また,これらの組換価は遺伝子の異常分離によって歪められていることが推測されたが,Acp-1--Pox-2-d-33の順に連鎖していることが推定された.染色体11(第VIII連鎖群)に座乗するPgd-1は,la(もつれ)及び。v-4(緑変葉)とそれぞれ14.2%と5.4%の組換価を示し,laとv-4は9%の組換価を示した.さらにAdh-1がPfd-1及びv-4とそれぞれ19.4%と26,8%の組換価を示したため,これらの遺伝子がla-v-4-Pgd-1-Adh-1の順序に連鎖していることが確認された.Pgd-2は染色体6(第I連鎖群)に属するアイソザイム遺伝子であるEst-2及びPgiー2とそれぞれ24.2%及び29.6%の組換価を示した.またEst-2とPgi-2間の組換価が9,6%と算出されたため,Pgd-2-Est-Pgi-2の順序に連鎖していることが確かめられた.Gdh-1はPhi-1と8.4%の組換価を示し,Pgi-1は染色体3(第XI+XII連鎖群)の標識遺伝子chl-1(黄緑葉)と。v-1(緑変葉)に対して,それぞれ27.2%及び34.4%の組換価を示した.標識遺伝子であるchl-1とv-1の連鎖地図上の位置が0と58と報告されていることより,Pgi-1は両標識遺伝子のほぼ中間に位置しており,Gdh-1も同染色体上に存在していることが示唆された.以上の結果から,9種のアイソザイム遺伝子と標識遺伝子との連鎖関係が新たに見いだされ,いままで報告されている結果の一部を含めて11種のアイソザイム遺伝子と6種の標識遺伝子の連鎖関係をFig.1に要約した.それらはイネ12本の染色体のうち4本に散在していた.
  • 景山 幸二, 矢部 和則, 宮島 成寿
    1991 年41 巻2 号 p. 273-278
    発行日: 1991/06/01
    公開日: 2008/04/18
    ジャーナル フリー
    メロンの完熟種子からの不定胚誘導では,静置培養によるカルス形成,カルスのホルモンフリー培地での静置あるいは液体振とう培養が行われてきた.本実験では不定胚誘導の全ての培養を液体振とう培養で行い,効率的に不定胚を形成させる条件について検討した.ホルモン添加培地での培養機関が不定胚形成に及ぼす影響を調べるため,完熟種子切片を2,4-D1mg/l,NAA1mg/l,BA 0.1mg/l,ショ糖30g/lを含むMS培地で0~14日振とう培養後,培養細胞塊をホルモンフリーのMS培地に移植して振とう培養した.その結果,ホルモンを含む培地での培養期間は,形成される不定胚の形態および不定胚数に影響を及ぼした.不定胚は,細長い胚軸および2枚の子葉をもつもの(正常胚)と太短い胚軸および3枚以上の子葉をもつもの(異常胚)に分けられ,正常胚は培養期間7日で最も多く形成されたが,その占める割合は5日以前の培養期間のもので高かった(Table 1,Fig.1).
  • 田浦 悟, 小川 紹文, 吉村 淳, 大村 武
    1991 年41 巻2 号 p. 279-288
    発行日: 1991/06/01
    公開日: 2008/04/18
    ジャーナル フリー
    イネ白葉枯病に対する抵抗性の遺伝資源を拡大する目的で化学変異原を用いて抵抗性突然変異を誘発することを試みた.すべてのフィリピン産イネ白葉枯病菌レースに対して感受性を示すイネ品種IR24の受精卵を突然変異の処理に用いた.受精卵の発達ステージをできる限り一致させるため,すでに開花した頴花を取り除き,処理当日午前11時から12時(開花時刻を午前11時30分とする)に開花した頴花を処理のために残して,未開花の頴花をすべて取り除くという開花調節を行った.時間内に開花した頴花は開花後8,10,12,14,16,18,20時間の7とおり,時間別に1mMのメチルニトロソウレア(MNU)水溶液に穂を45分間浸漬する処理を行った.処理後,24時間流水で洗い,豊熟後M1種子として採種した.M1植物は水田に移植し,M1植物の自然交雑を防ぐため出穂時に袋掛けをして自殖種子をM1個体別に系統として採種した.抵抗性の選抜はM2の幼苗期に行った.M2の1系統(15~40粒)を1列に,14系統を育苗箱(52×47×10cm)に播種した.5箱ごとに1列IR24を対照として加えた.播種後24日目に28℃で2日間ジャガイモ半合成培地で培養したフィリピン産イネ白菜枯病菌PX0112(レース5)を濃度約108cells/mlでせん葉接種法によつ接種した.接種10日後,抵抗性個体を分離した系統を選抜した.その結果,供試2,739M2系統中2個の抵抗性系統,XM5およびXM6を得た(Table 1).
  • 遠藤 昇, George A. BUSTO Jr., 小川 紹文, Gurdev S. KHUSH
    1991 年41 巻2 号 p. 289-300
    発行日: 1991/06/01
    公開日: 2008/04/18
    ジャーナル フリー
    世界各地のイネ品種における白菜枯病抵抗性遺伝子の分布を調べる目的で,まず変異の多様性中心に含まれるミャンマー由来のイネ品種についてフィリピン産白菜枯病菌レースを接種検定し,その反応型による分類を行った.IRRI保存のミャンマー由来1473品種を供試し,フィリピン産白菜枯病菌レース1,レース2,レース3,レース4を幼苗期接種(せん葉接種)し,病班長の伸展から抵抗性(R),感受性(S),中度抵抗性(M)を判別した.その結果,337品種にSRSS,RSSM,RRSM,RRRM,MMMMの5種類の反応型を認めた.これらの反応型を示した品種を成稲期に接種し,反応型を確認した.上記4レースに加え,レース5,レース6も用い,雨期,乾期と異なる季節での接種検定から反応型を確認した.また,各抵抗性を支配している遺伝子の安定性を分散分析により推定した.その結果,主としてMMMM反応型の218品種は感受性と判定され,残る119品種の反応型は,幼苗期のそれとよく一致し,準同質遺伝子系統の反応型をテスターとして比較するとSRSS型はIR-BB10(Xa-10)にRSSM型はIR-BB4(Xa-4)に、RRSM型はIR-BB4とIR-BB10の重複型に,また,RRRM型はIR-BB5(xa-5)の反応型に相似であることがわかった.MMMM型はさらにRRRR(褐変反応型)と中度抵抗性型品種群に分類され,RRRR(褐変反応型)は,IR-BB3(Xa-3)の反応型とよく一致した.小川ら(1991)の分類に従い,IR-BB10型をCAS209品種群,IR-BB4型をTKM6品種群,IR-BB4とIR-BB1Oの重複型をMond Ba品種群,IR-BB5型をDZ192品種群,そしてIR-BB3型をJava14品種群に分類した.中度抵抗性品種群は分類できない群として仮にnon-ciassified(NC)品種群と分類した.分散分析の結果から季節変動を環境因子に,品種群間差を主動遺伝子による変動とし,さらに品種群内変動を品種の遺伝的背景による差であると仮定すると,抵抗性遺伝子の効果は,50%から80%と高く,環境因子の変動は7%から26%と低かった(Table 2).品種群別にはCAS209,DZ192群の抵抗性CASは安定しておつ,TKM6,NC品種群は比較的不安定であったが,反応型による差は品種群内変動にきれいに現れ,反応型から分類した品種群は正しく分類されていると考えられた.ミャンマー由来品種は,44(37%)品種がCAS209群(Table 3),33(28%)がTKM6群(Table 4),4品種がMond Ba群(Table 5),9品種がDZ192群(Table 6),3品種がJava14群(Table 6)に分類され,26品種が中度抵抗性品種群(MMMMM)として分類され(Table 7),CAS209優先型の分布が特徴的であった.
  • 長峰 司
    1991 年41 巻2 号 p. 301-307
    発行日: 1991/06/01
    公開日: 2008/04/18
    ジャーナル フリー
    著者らはこれまでに酸素電極法を用いた多点式酸素放出量測定装置を作出し,イネ葉身酸素放出量の測定方法を開発した.91品種の在来イネの酸素放出量を測定して個集光合成能力を調べたところ,大きな変異が存在することを認め,アジア栽培稲の中ではジャワ型品種群が酸素放出量が低いことを明らかにした.本報ではイネ個葉光合成能力の遺伝分析の結果を報告する.本実験においては,'葉身から放出される酸素量を個葉光合成能力とした.酸素放出量のスクリーニングの結・果から,高放出最現品種として中国の改良品種窄葉青8号および日本の改良品種十石,低放出量親として日本の在来品種I信州金子および中国の在来品種納西を選んだ.窄葉青8号×信州金子および十石×納西の2組の正逆組合せのF1植物と1雑種集団を作出した.これらの材料を両親とともに圃場に栽培し,各組合せについてそれぞれ特定の一時期に酸素放出量を測定した.測定条件は温度25℃,照度7万ルックスとし.多点式測定・装置を用いて行った.いずれの組合せにおいても,F1の酸素放出量は低放出量親の値に近かった.また,F2雑種集団の酸素放出最は両親の値より超越した分離を示し,その分布は正規分布に似ていた.これは,用いたF2個体の生育ステージの変異が広く,同じ生育ステージにおける壊素放出最がえられなかったためと考えた.
  • 鵜飼 保雄
    1991 年41 巻2 号 p. 309-323
    発行日: 1991/06/01
    公開日: 2008/04/18
    ジャーナル フリー
    HAYMAN(1954)とJlNKS(1954)によつ量的形質の解析に導入されたダイアレル分析法は,交雑次代という早い世代て湘加及ひ優性分散成分や親の遺伝子型についての情報等が得られるので,よく利用される統計遺伝学手法の一つである.理論的研究も進められ,とくにHAYMAN(1954)の6条件が成立たない場合について,多くの論文で検討された.しかし,分析結果の精度を論じる上で最も基本的問題である環境変動の影響を扱った例はごく少ない.そこで,この問題をコンピューター・シミュレーションによって検討した.目的の形質は3遺伝子座に支配され,各座は2対立遺伝子をもつとした.簡単のため,3座間で相加効果も優性効果も等しいとし,また完全優性とした.親はAABBCC,AABBcc,AAbbCC,aaBBCC,AAbbcc,aaBBcc,aabbCC,aabbcc,の遺伝子型をもつ8系統とし,親およびその全紙含せの交雄F1の遺伝子型値を求めた(表1,図1).遺伝卒をD/Vpにより定義し,遺伝率を0.9,0.8,0,7とした場合の環境変動に相当する.正規乱数を発.生きせて,親とF1の遺伝子型値に加えてそれぞれの表現型値を求め,8×8ダイアレル表を作成した.各2反復1000のダイアレル表について,(Vr,Wr)図,遺伝成分,遺伝推定量の値を言十算し,それらに対する環境変動の影響を調べた.
  • 伊藤 三明, 森本 秀樹, 松本 省吾, 大隅 和寿, 小西 宏明
    1991 年41 巻2 号 p. 325-329
    発行日: 1991/06/01
    公開日: 2008/04/18
    ジャーナル フリー
    ヘチマLuffa cylindrica ROEM.とアマチャヅル,Gynostemma pentaphyllum MAKlNOの体細胞融合を行い,その雑種細胞を作出した.すなわち,10mMのヨードアセトアミド処理で不活化したヘチマの子葉プロトプラストと未処理のアマチャヅルの培養細胞プロトプラストをPEG-DMSO法で融合した.雑種細胞のみを選抜するために,未処理のヘチマの子葉プロトプラストがコロニー形成し,かつ,未処理のアマチャヅルの培養細胞プロトプラストが分裂できない培地を用いて培養した.その結果,6個の小カルスを得ることができ,そのうち,4個の小カルスが培養開始後3ヶ月目のアイソザイム分析において両親のバンドを共有し雑種性を示した(Fig.2).これらの雑種カルスのうち,3個は黄色の柔らかいカルスであり,残りの1個は白色の柔らかいカルスであった.これらの雑種.カルスは培養開始後2年目のアイソザイム分析においても両親のバンドを共有していた.雑種性を示さなかった2個の小カルスは緑色の硬いカルスで,形態的にもアイソザイム分析においてもヘチマ子葉プロトプラスト由来のカルスとよく似ていた.雑種カルスは,ホルモン要求性においても両親の性質を併せ持っていた.これらの雑種カルスの染色体数は非常に多く,また,それぞれ異なっていた(Fig.3).この多様性は,アマチャヅル培養細胞における染色体数の多様性に依存しているのではないかと思われる.これらの雑種カルスは根や植物体を再生しなかったが,定性的にサポニン合成を確認することができた.
  • 大沢 良, 津村 義彦, 生井 兵治, 鷲谷 いづみ
    1991 年41 巻2 号 p. 331-339
    発行日: 1991/06/01
    公開日: 2008/04/18
    ジャーナル フリー
    国の天然記念物である田島ケ原サクラソウ集団(埼玉県浦和市)の潜在的遺伝変異の大きさを明らかにすることを目的として,田島ケ原集団の33クローンを対象に6酵素種のアイソザイム分析をポリアクリルアミトゲル電気泳動法によって行った.また,遺伝的変異の大きさを比較するために八ヶ岳の自生集団の6クローンについても同様に調査した.その結果,各クローンともクローン内側休問変異は認められず同一花型のクローン内の各側体は栄養繁雑に由来すると考えられた.多型遺伝子座の割合は田島ケ原集団40.0%,八ヶ岳集団50.0%,1遺伝子座の平均対立遺伝子数は,両集団とも1.6個,平均異型接合性は,田島ケ原集団でO.192,八ヶ岳集団では0,196となり,各指標とも田島ケ原集団と八ヶ岳集団との間に大きな違いは認められなかった.また,各々の遺伝子型から数量化理論III類および正準判別分析を用いてクローン間の類縁関係を調べた結果,田島ケ原集団の変異の大きさは花粉媒介昆虫の訪花が盛んな八ヶ岳集団に比べて特に小さいとは言えないことが示唆された.
  • 影山 泰, 福岡 浩之, 山元 暗二, 武田 元吉
    1991 年41 巻2 号 p. 341-345
    発行日: 1991/06/01
    公開日: 2008/04/18
    ジャーナル フリー
    イネの人為4倍体の集団に数世代にわたってガンマ線照射することによって2倍体に復帰する個体が出現してくる.今までに10個体を得ているが,その中の1個体については後代に多くの突然変異体を分離するものとしてすでに報告した(YAMAM0T0 et al.1989).さらに同じ後代に胚乳を欠失した種子を持つ突然変異体が出現した.無胚乳突然変異体の種子発生においては早い時期に胚乳が発達を停.上して消失してしまうにもかかわらず,胚は生長を続け地上部と地下部の組織を分化して大きいもので長さが3mmの巨大な胚になる.しかも,休眠が無く頴のなかで発芽を続けてしまう.これらの種子の願を取り除き,無機物質(MS培地)と3%の蕉糖を含む個体培地上で生育させ,10cmほどに生長した幼苗をポットに移植した.生長した植物体は外見的に正常であったが,すべて無胚乳種一子だけを着けていた.無胚乳種子を分離する個体における正常種子と無胚乳種子の比は3:1に適合していた.またこの正常種子より得られた個体は,正常種子のみを着ける個体と正常種子と無胚乳種子の両者を着ける個体に分離し,その比率は1:2に適合していた.このことから無胚乳種子は劣性の単因子によって支配されていることが推察された.ただし無胚乳種子が染色体の小さな部分の欠失による可能性は残されている.
  • 下西 恵, 石川 雅也, 鈴木 誠一, 大澤 勝次
    1991 年41 巻2 号 p. 347-351
    発行日: 1991/06/01
    公開日: 2008/04/18
    ジャーナル フリー
    超低温保存は安定的かつ省力的な遺伝資源の保存法として多くの種で試みられているが,不定胚を用いた報告は非常に少ない.筆者らは,凍結防御剤を用いた予備凍締法によらず,乾燥処理を行ったメロン(Cucumis melo L.)の体細胞不定胚を液体窒素中で保存することを試み比較的高い生有率を得ることが出来た.材料は,完熟種子の胚軸由来カルスから誘導した不定胚を用いた.乾燥処理する前にアブシジン酸(10mg/l)を含むMS培地で前培養を行い,相対湿度50,60,65%でゆるやかに乾燥させた.水分平衡に達した不定胚の含水率は相対湿度60%で11,8%であった(Fig.2).乾燥した不定胚は直接液体窒素にいれ翌日40℃の温水中で急速に融解して再分化培地に置床した.再培養した不定胚の生存卒は,主に不定胚の大きさによって左右され,長さ2~3mmの大きめのもので高い生存率が得られ,これらの生存率は相対湿度60%及び65%で乾燥させたもので45%~65%となった(Table 1).なお,再生した植物体は二次胚によるものではなく,保存した不定胚そのものが発芽したものであった.この方法によればプログラムフリーザーなどの機器を必要とせず,安価な超低温保存が可能である.
  • 牛山 智彦, 清水 孝夫, 桑原 達雄
    1991 年41 巻2 号 p. 353-357
    発行日: 1991/06/01
    公開日: 2008/04/18
    ジャーナル フリー
    属間交雑を利用したコムギ半数体の作出頻度を高めるため,コムギとの交雑能力の高いトウモロコシを選抜することを目的として,コムギ(品種ニシカゼコムギ)とトウモロコシ39品種・系統,テオシント1品種を交雑し,受粉直後に切除穂を100ml/lの2,4-ジクロロフェノキシ酢酸,10ml/lのエタノール,8ml/lの亜硫酸水,40g/lの蔗糖を含む水溶液で生育させた.結実した種子から胚を摘出し,無菌的に培養した結果,テオシント(Zea mays ssp.mexicana)は,胚形成卒38.5%,受粉小花当たつ植物体再生卒31.5%と高額皮に半数体を誘導し,得られた胚の再生率が81.8%と非常に高い値を示した.以上からコムギ半数体作出のための属間交雑の花粉親としてテオシントを用いることは極めて有用である.
  • 前川 雅彦, 犬飼 剛, 新橋 登
    1991 年41 巻2 号 p. 359-363
    発行日: 1991/06/01
    公開日: 2008/04/18
    ジャーナル フリー
    インドネシア在来イネ品種シレワーと北海道品種はやこがねとのF1雑種で極端な種子不稔が見出された.この種子不稔の原因について検討したところ,まず細胞質の影響はなく,またF1雑種の花粉稔性は正常であった.そこで,F1雑種の開花時の菊を観察したところ,不裂開約が多数見出された.これらのことから,F1雑種の種子稔性が低い原因は,多数の菊の不裂開に起因しているのではないかと推察された.そこで,はやこがねとシレワーとのF1雑種と同様にシレワーとのF1雑種が種子不稔を示す品種が他にあるかどうかを明らかにするために,はやこがねの親系統とシレワーとの間で交雑を行った.その結果,農林15号,北斗および共和とのF1雑種が種子不稔を示した.従って,シレワーとのF1雑種で種子不稔を生ずる品種が日本型イネ内に分化していることが示唆された.
  • 山本 奈美, 小野 玄記, 高島 邦夫, 戸塚 昭
    1991 年41 巻2 号 p. 365-368
    発行日: 1991/06/01
    公開日: 2008/04/18
    ジャーナル フリー
    カカオのDNA抽出方法を一部改変し,ブドウ(Vitis vinifera,V.labrusca,及び台木系品種)新葉から,容易に制限酵素消化を受けるDNAの抽出方法を確立した.この方法を用い,ブドウ10品種から全DNAを抽出し,ニンジンのフェニルアラニン・アンモニアリアーゼ(PAL)cDNAをプローブに用いて,RFLPsの検出を行った.その結果,全サンプルに共通のバンド3本を含む10-15本/レーンのバンドが検出され,全サンプルが異なるパターンを示した(Fig.1).また,PALのRFLPsをもとに系統樹を作成したところ,形態的分類と比較的よく一致する結果が得られた(Fig.2).
  • Mohsen BOUBAKER, 山田 利昭
    1991 年41 巻2 号 p. 381-387
    発行日: 1991/06/01
    公開日: 2008/04/18
    ジャーナル フリー
    北アフリカおよび中近東地域のデュラムコムギ秋播栽培地帯においては,播種後の乾燥に加えて低温による出芽遅延を回避することが最重要課題の一つである.そこで本実験では,低温条件下で早期出芽性を示す有用遺伝資源を探索した.実験には,96品種のデュラムコムギおよび比較として播性程度の異なる6品種の普通系コムギを供試した.温度は5℃,10℃,15℃および20℃の恒温条件,日長は10時間とした.32.3cm×23.3cm,深さ5.2cmのプラスチックバットに土:バーミキュライト1秒=2:2:1の培養土を入れ,深さ1.5cmの位置に胚を上にして播種した.温度処理を1次因子とする分割試験区法により,1品種・1プロット当たり5粒を播種し,4回反復した.各グロースキャビネット内での温度および光のむらによる影響をなくするために,バットはターンテーブルの上に置き,常時回転させた.各個体の出芽日を記録し,播種日から起算した日数を出芽日数とした.
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