育種学雑誌
Online ISSN : 2185-291X
Print ISSN : 0536-3683
ISSN-L : 0536-3683
長粒型日本稲品種の多収要因
滝田 正
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 41 巻 3 号 p. 467-473

詳細
抄録
日本型で長粒特性を持つイネ系統の西海187号の多収要因を解析し,かつその多収要因が長粒特性とともに後代に遺伝する可能性について検討した.西海187号は,標肥と多肥条件を含む3年間5回の栽培試験において安定した多収性を示し,短粒型の日本晴と黄金晴よりも平均8%多収であった.西海187号は,短粒型よりも粒長が1.Omm長く,1粒重は6mg重く約29mgであり,短桿中間型の草型を示した.西海187号は,シンクサイズ(1粒重X級数)を形成する籾殻重は短粒型品種よりやや小さかったが,単位籾殻重当りのシンクサイズが特異的に大きいためにシンクサイズが大きくなり多収であった.単位籾殻重当りのシンクサイズは籾すり歩合(玄米重/初重)と正相関の関係にあり,西海187号は籾すり歩合も高かった.また,西海187号を片親に持つ長粒型系統も,西海187号と同じく,籾すり歩合が高く,シンクサイズが大きく,多収であった.長粒型品種の籾すり歩合が高い特性は,表面積と体積の関係カiら長粒性に起因していると考察した.以上の結果,長粒特性にはシンクサイズを大きくし多収にする能力のあることが確認された.
著者関連情報
© 日本育種学会
前の記事 次の記事
feedback
Top