育種学雑誌
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ラッカセイにおける子葉節からのマルチプルシュートの誘導
大門 弘幸三位 正洋
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1991 年 41 巻 3 号 p. 461-466

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抄録
ラッカセイ(Arachis属)において、細胞育種的な技術を用いて育種素材を作出するための基礎となる、器官分化の制御に関する知見を得るために、完熟種子の子葉節からのマルチプルシュートの誘導条件について検討した.1988年11月に採種後,5℃で5ヵ月間貯蔵した栽培種A.hypogaea(品種:千葉半立,ジャワ13号・白油7-3)の種子を1%次亜塩素酸ナトリウム溶液(含 Tween20)に10分間浸漬して表面殺菌し,滅菌水で3回洗浄後,種皮を取り除き,ベンジルアミノプリン(BAP)を0,1,10,50mg/l添加したB5培地(しょ糖20g/l,ジェランガム2g/l)に置床した.各品種ともにBAP添加区において,培養開始後15日目頃から上胚軸の基部が肥大し始め(Fig.1A),25日目には10mg/lおよび50mg/l添加区において,肥大した部位に小さな突起が生じた(Fig.1B,C).これらの突起は40日目には多くのシュート(マルチプルシュート)に発育した(Fig.1D).マルチプルシュートの形成率は,BAP50mg/1添加区において高く,千葉半立で40%,ジャワ13号と白油7-3でそれぞれ80%であった(Table1).組織学的な観察から,これらのシュートは,培養初期に発育した子葉節分枝に新たに形成された腋芽が発育したものであることが示された(Fig.1F).
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