育種学雑誌
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アワ(Setaria italica P. Beauv.)に見いだされた分けつ性の変異とその地理的分布
落合 雪野
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1996 年 46 巻 2 号 p. 143-148

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抄録
本研究ではアワ(Setaria italica P. Beauv.)の分けつ性について詳細な知見を得るため,ユーラシア各地の16系統について実生から成熟期に至るまでの全生育期間にわたって,分けつの発生様式を京都で観察した.その結果アワは分けつ性についてI型,II型,III型,IV型の4つの分けつ型に分けられることが明らかになった(Table1).I型は4タイプのうちで最も有効分げつ数が多く,主桿の多くの節から一次分げつが発中.し,また二次分げつや三次分げつも生じる(Figs.2,3).I型の分けつ様式は,アワの祖先野性種であるエノコログサ(S.Varidis P.Beauv.)の分けつ様式ときわめてよく似ている.II型は一次分げつが1本もしくは2本しか発生せず,二次分げつ以降の高次の分けつも見られないため,有効分げつ数は2または3となるタイプである(Figs.2,3).III型は主桿だけに穂をつけ,全く分けつを.生じない非分げつ型である(Figs.2,3).II型およびm型はI型とは明らかに巽・なる分けつ様式を示すが,これはまず高い分けつ能力を持つI型がエノコログサから栽培化され,次に強い頂芽優性を示すII型とIII型がI型から分化してできたものと考えられる.
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