育種学雑誌
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オオムギの発芽時の耐塩性における品種変異ならびに各種主働遺伝子の効果
間野 吉郎中住 晴彦武田 和義
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1996 年 46 巻 3 号 p. 227-233

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抄録
世界各地のオオムギ6,712品種を,1.O,1.5,ならびに2.O%の塩化ナトリウム溶液で発芽させて発芽時における耐塩性を評価し,その品種変異,地理的変異ならびに主要形質との関係を解析した.さらに,同質遺伝子系統を用いて各種主働遺伝子が発汗時の耐塩性に及ぼす影響を調べた.発芽時における耐塩性を地域別に比較すると,中国および朝鮮半島の品種が強く,日本やトルコの品種が弱かった.主要形質別に耐塩性を比較したところ,六条品種は二条品種より,裸品種は度品種より,小穂非脱落性の東亜型は西域型より,日本と朝鮮半島の六条品種のうち並品種は同地域の半矢要性の渦品種よりもそれぞれ耐塩性が有意に強かった.同質遺伝子系統を用いた解析の結果,条性,皮裸性,並渦性を支配する主働遺伝子は発芽時の耐塩性に影響を及ぼすものとみられた.耐塩憧とポリエチレングリコールに対する耐性との間には密接な関係がみられ,発芽時における塩害は主に浸透圧の影響によるものと考えられた.耐塩性が弱い品種を再度1.O%溶液で選抜した極弱品種には西アジアの二条・黒粒の品種が多くみられた.また,耐塩性が強い品種を2.5%の塩化ナトリウム溶液で選抜した極強品種には中国の六条品種が多くみられ,これらの多くは,海水でも発芽した.発芽時の耐塩性と我々がこれまでに検定した幼植物の耐塩性は無相関であり,これらは別々のメカニズムによるものとみられた.
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