抄録
普通ソバ(Fagopyrum esculentum)は,ヘテロスタイリーに起因する自家不和合性植物である。一方,その近縁野生種(F. homotropicum)は自家和合性植物であり花の形態はホモスタイルである。これらの間で得られた種間雑種は,ホモスタイリーに基づく自家和合性を示すことが知られている。遺伝分析の結果,ホモスタイルは,ヘテロスタイルに対して優性かつ単一の遺伝子で支配されていることが明らかとなり,この遺伝子をHo遺伝子と命名した。F2181個体からホモスタイルとヘテロスタイルの表現型に基づいてバルクしたDNAサンプルを調製し,それを鋳型にRAPD分析を行った。供試した396のランダムプライマーのうち11のプライマーで,両サンプル間に多型を検出することができた。これらのプライマーを用いて詳細な調査を行ったところ,8つのプライマーの多型断片は偽陽性であることが判明した。残り3つのプライマーで増幅された多型断片を,それぞれOPB141250,0PP81000,0PQ7800と名付けた(F1g.1)。これら3つのRAPDマーカーを用いて連鎖解析を行ったところ,Ho遺伝子と連鎖していることが示された(Fig.2)。連鎖分析の結果,すべてのRAPDマーカーは,Ho遺伝子に対して同じ向きに座乗していることが判明した(Fig.3)。特に0PB141250は,Ho遺伝子からわずかO.6cMの位置にあることが示された。