育種学雑誌
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ヒノキ属の種間雑種にみられた葉緑体DNAとミトコンドリアDNAの父性遺伝
近藤 禎二津村 義彦河原 孝行岡村 政則
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1998 年 48 巻 2 号 p. 177-179

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抄録
針葉樹では葉緑体DNAが父性遺伝し,ミトコンドリアDNAが種によって父性あるいは母性遺伝することが報告されている。ヒノキ科についてはオニヒバ属について一例報告されているのみである。そこで,わが国において林業上重要なヒノキ属について葉緑体DNAとミトコンドリアDNAの遺伝様式を調べた。ヒノキとサワラの種問雑種4個体から全DNAを抽出し,制限酵素HindIIIで切断し,タバコの葉緑体DNAのpTB 8をプローブにしたサザンハイブリダイゼーションでは,4個体すべてが父親であるサワラと同じパターンを示した(Fig.1)。ミトコンドリアDNAについては,BglIIで切断し,PCRで増殖したcoxIをプローブにしたサザンハイブリダイゼーションでは,4個体すべてが父親であるサワラと同じパターンを示した(Fig.2)。以上の結果から,ヒノキ属では葉緑体DNAおよびミトコンドリアDNAとも父性遺伝すると考えられ,オニヒバ属での結果と一致した。ミトコンドリアDNAは葉緑体DNAに比べて種間の多型が多かった。PCRで増殖したcoxI遺伝子の一部は長さが1325bpで,被子植物とも高い相同性を示し,これをプローブにしたサザンハイブリダイゼーションでは明瞭なパターンを得た。
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