抄録
日本陸稲品種の耐干性向上を図るため,外国産稲品種の土壌深層における根の分布や太さをざんごう法により観察し,耐干性と根系発達程度との関係を検討するとともに,外国品種の耐干性育種における育種素材としての有効性を検討した.南・東南アジア,中国,台湾,アフリカ,アメリカ,ヨーロッパ等の255品種を茨城県農業試験場畑圃場で栽培し,収穫後に畦沿いに深さ60cmの溝を掘り,土壌深度別に根の量と太さを観察した。そのうち南・東南アジア,アメリカ,ヨーロッパ起源の91品種、中国起源の81品種の苗期の耐干性を検定し,深根性との関係をみた。土壌深層における根系発達程度は耐千性のうち断水による萎凋度と有意な関係は認められなかったが,回復力とは有意な正の相関が認められた。従って,土壌深層部における根系発達程度は苗期における回復力に影響をおよぼしている考えられた。根系を観察した品種群ではアフリカ,インド,中国品種に深根性の品種が多く見いだされた。特にIR3646,IRAT10,IRAT109,IRAT110,JC81,Nam Sugai19等の深根性品種を耐干性遺伝子源として日本陸稲品種と交配し,現在までにインド品種JC81由来の“ゆめのはたもち”やlRAT109由来の“関東糯72号”など従来の日本の陸稲品種の水準を超える高度耐干性を備えた品種の育成に成功した。