育種学雑誌
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ブラジル大豆品種におけるイソフラボン含量の栽培場所の影響
C.Mercedes Carrao-Panizzi喜多村 啓介/Maria C. N. Oliveira
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1998 年 48 巻 4 号 p. 409-413

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抄録
大豆種子中に存在するダイジンおよびゲニスチンなどのイソフラボン成分は大豆加工食品に不快味をもたらす要因であるが,一方では,抗腫瘍性などの重要な薬理作用や耐虫性・抗菌性などのファイトアレキシン作用を示すことが認められている。これまで,大豆イソフラボン含量には品種間差異があることや豊熟期の高温によって著しく低下することが報告されている。我々は前報(Carrao-Panizzi & Kitamura,1995)において,ブラジル大豆のイソフラボン含量に品種および年次間差異があることを示した。そこで,本研究では,ブラジル大豆15品種を用いて,ブラジル国パラナ州ロンドリーナ市(南緯23度11'50”)およびポンタグロッサ市(南緯25度05'58”)の2地点,各3播種時期で栽培し,大豆種子中のイソフラボン含量を高速液体クロマトグラフィーにより定量し,栽培場所間による違いを分析した。その結果,どちらの栽培場所においても,総イソフラボン含量は,“IAC100”,“IAS5”,“IAC8”,“G0/BR-33”および“BR-37”で高く(2地点平均146.9~119.5mg/1OOg),“BA/BR-31”および“BR-36”で低く(2地点平均各57.5および53.7mg/100g),前報と同様の品種間差異を認めた(Tab1e 2)。また,ロンドリーナ市で栽培された大豆品種はポンタグロッサ市のものよりも31%も低い総イソフラボン含量を示した(全品種平均各82.0および119.7mg/100g)。両市の豊熟期の平均気温は各々23度および20度であり,この気温差および土壌などの他の環境要因が大豆イソフラボン含量の栽培場所間差異をもたらしたものと思われる。
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