抄録
(1)錦葵科の種,属間の雑種に関する研究の一環として,フヨウ(H. mutabilis)とクサフヨウ(H. Moscheutos)との間の正逆交配を行い.フヨウ×クサフヨウに於てのみ交配に成功し,その雑種を得た。(2)フヨウ×クサフヨウの着歩合は35.26%であるが、発芽力ある種子を持ったのみの着歩合は13.16%であり,念性は37.31%であつた。フヨウ×クサフヨウに着生したの大きさは母親の自殖時のより小さく,F1種子の形はフヨウと同じであつたが,その大きさはフヨウより小さかつた。(3)フヨウ×クサフヨウに於ける一中の発芽力ある種子の数は少く3.3粒であつたが,有種子のみについてみると8.8粒であつた。F1種子の発芽歩合は41.67%で,両親より稍々低かつた。(4)F1の子葉の形は,クサフヨウと殆んど同じであつたが,大さは稍々小さかった。F1の葉の形は両槻の中間よりフヨウに類似していた。F1の花の形はクサフヨウと殆んど同じであつたが,大さはクサフヨウより稍々小さく,両親の中問であった。F1の花の色は,濃いピンクであつて,フヨウは白,クサフヨウは簿いピンクであつた。F1の開花は生育1年目では両親の中間より稍々遅かつたが,二年目では開花の早いクサフヨウと殆んど同じで,著しく早くなった。(5)F1の草丈は生育初期ではフヨウと殆んど同じで低かつたが,10月中旬ではクサフヨウと同じ位に長く伸長し,生育2年目では両親より著しく高くなつた。F1の茎の太さは両親より太く,葉数,節数及び分岐数は両親より多くなつた。F1の生育型は両親と同じ個体のものは見られず,その中間の9種を得た。Flの菜の組織は木本のフヨウと著しく類似した。(6)F1の花粉粒は大小各種で,不健全花粉粒が大部分を占め,健全花粉粒は僅かにO.3%で,その大さは両親より大きかつた。F1の1葯中の花粉粒の数は,両親より著しく多かつた。(7)F1のは落ちないが,萎縮して枯れた様な状態で着生し,完全不稔であつた。而して両槻に戻し交雑したが,種子は得られなかった。(8)フヨウ,クサフヨウ及びF1の染色体数は2nで夫々92,38及び65であつた。F1の還元第1分裂中期では19II+27Iが見られが,規則正しい分裂はごく僅かで,大部分は幾多の著しい不規則が見られ,多極核分裂が著しく多く観察された。而してフヨウとクサフヨウとの間には一組の相同のゲノムが存在する模様である。