育種学雑誌
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薄荷の育種学的研究 : 第10報 日本薄荷の人為3倍体
池田 長守宇渡 清六
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1959 年 9 巻 1 号 p. 21-27

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抄録
(1)コルヒチン処理によって得た4倍体日本薄荷(体染色体数=192)を日本薄荷(体染色体数=96)と交雑して得た種子を播種して67個の実生を得たが,うち35個体を供試した。これらはいずれも体染色体数=144で,3倍体日本薄荷であることを確認した。(2)この交雑実験で4n(♀)×2n(♂)及び2n(♀)×4n(♂)は共によく結実したが,後者の種子は殆んど発芽しなかった。(3)3倍体は個々の栄養器官は大形化するが4倍体程ではなく,所調半拡大型を示す。しかし茎葉ののびや植物体の繁茂の状態はむしろ4倍体を凌駕した。(4)開花始の時期は原種2倍体は7月下旬から8月中句に亘り,4倍体の開花始は9月上旬から下旬に亘るが,3倍体の開花始はその全期間にわたり,変異の幅が広い。(5)3倍体は雄蕋が完全に発達せず,葯の内容は空虚であるか或は発育の悪い不稔の花粉粒が僅かに入っているに過ぎない。又放任受粉では勿論,両親に戻交雑しても殆んど結実しない。即ち雄性配偶子,雌性配偶子共に不稔で麦)る。(6)3倍体においては,PMCのMIにおける染色体の接合型は4II+48Iが多く,約65%のPMCにおいてこの型が見られた。残りの35%のPMCでは1PMC中に1~3個の3価染色体が観察され,そのMIにおける像はそれぞれ1III十47II+47I,2III+46II+46Iあるいは3III+45II+45Iであつた。(7)日本薄荷のハプロイド染色体数である48個の染色体が3倍体のPMCのMIにおいて2価染色体を作ることなく,1価で止まるか或は2価染色体と結合して3価染色体を作ることから,日本薄荷が異質倍数体であることを確認した。(8)PMCのMIに1価染色体が多いため,後末期には多数の遅滞染色体が現われ,花粉4分子期の異常も多かった。(9)育成した3倍体日本薄荷の収油率、及び精油の遊離メントール含有率は,既存品種にとって代る程の高い価を示さなかった。しかしこれらの形質に関して3倍体間に変異が大きく,優秀な両親を選ぶことによって,又多数の3倍体を育成することによつて一属優れた3倍体を得る可能性のあることは充分認められた。
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