2023 年 4 巻 1 号 p. 35-51
ヒトゲノムの個人差と様々な形質との相関を大規模に検定するゲノムワイド関連解析(Genome Wide Association Studies=GWAS)により、形質に関連するゲノム領域が次々と明らかにされている。一方、GWASにより同定された個々の関連領域には時に数千もの統計的有意な変異が含まれ、それら全てが形質に因果的に寄与するわけではないことが知られる。ゲノムに刻まれた生命の設計図をより厳密に理解するためには、そうした領域内で因果的効果を有する変異を“精緻(fine)”に絞り込み理解することが重要とされる。
そこで本総説では、因果的変異を統計的に推定するfine-mapping手法に関して解説する。単一変異の寄与のみを考慮した単純なモデルから、より複雑かつ近年のバイオバンク規模のデータに適用可能なモデルまでを概観すると共に、疾患解析への応用や機能ゲノミクス、実験的検証との関連に関しても触れる中で、GWASのその先(post-GWAS)の時代の解析に関して展望する。