JSBi Bioinformatics Review
Online ISSN : 2435-7022
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選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
Primers
  • 鄒 兆南, 沖 真弥
    2023 年 4 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/03
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    真核生物の遺伝子発現は、ゲノムに対する転写因子やヒストンの結合パターンによって時空間的に精密に制御されている。この発現制御機構を理解するため、筆者らはゲノム上のタンパク結合を調べるChIP-seqデータを網羅的に解析し、転写因子の結合とヒストン修飾をゲノムワイドに閲覧できるChIP-Atlas(https://chip-atlas.org)を開発している。最近では、ATAC-seqとBisulfite-seqデータを新たに統合し、転写調節領域のエピゲノム状態をより多面的に捉えられるようになった。本稿では、ChIP-Atlasを概観した後、創薬医学、再生医学、遺伝性疾患などの研究分野における実際の応用例を中心に紹介する。このように、ChIP-Atlasのナビゲーションに従い遺伝子転写制御ランドスケープを「旅する」というイメージを膨らませることで、より多くの読者の方がChIP-Atlasを活用した研究成果を生み出し、遺伝子の発現制御機構の解明や生命科学の発展に貢献できればと思う。

  • 川崎 純菜, 伊東 潤平
    2023 年 4 巻 1 号 p. 10-25
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/03
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    ウイルスゲノム疫学とは、ウイルスのゲノム配列情報を用いて感染症の流行動態や伝播経路を把握することで、感染症の制御を目指す分野である。COVID-19パンデミック下において、前例のない規模でゲノム疫学調査が実施されるようになった。このような大規模調査により、ウイルスゲノム配列をリアルタイムにモニタリングすることが可能となり、公衆衛生上リスクの高いウイルス変異株の早期捕捉や、ウイルスの適応度の上昇に寄与するゲノム変異の探索が可能となった。本稿ではまずCOVID-19パンデミック下におけるウイルスゲノム疫学の発展について概説し、さらに今後も発生し続けると予想されるウイルス感染症に備えるための課題と展望について議論する。本稿がウイルス学と生命情報科学との新たな融合研究のきっかけになれば幸いである。

  • 三嶋 博之
    2023 年 4 巻 1 号 p. 26-34
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/03
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    ゲノム情報にもとづく医療の分野は大きく広がっている。その中で最も患者・家族のもとに成果をとどけられた分野の一つが、難病・希少疾患のゲノム医療である。難病・希少疾患は、個別の疾病としてはまれなものであるが、試算によっては、その数は10,000以上に上る。総数としては、日本では指定難病症例だけでも100万症例を超える「ありふれた疾患」と言える。他のゲノム医療分野と同様に、この分野においてもバイオインフォマティクスは中心的役割を果たしている。エクソーム解析・全ゲノム解析といったゲノム網羅的な解析は強力ではあるが、現状における診断率は概ね40%台にとどまっている。本稿ではこの診断率を向上させるための方策、現状の難病・希少疾患解析ワークフローの概要とともに、ワークフロー改良のための新たな試み、そして今後の社会実装について概説する。

  • 王 青波
    2023 年 4 巻 1 号 p. 35-51
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/03
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    ヒトゲノムの個人差と様々な形質との相関を大規模に検定するゲノムワイド関連解析(Genome Wide Association Studies=GWAS)により、形質に関連するゲノム領域が次々と明らかにされている。一方、GWASにより同定された個々の関連領域には時に数千もの統計的有意な変異が含まれ、それら全てが形質に因果的に寄与するわけではないことが知られる。ゲノムに刻まれた生命の設計図をより厳密に理解するためには、そうした領域内で因果的効果を有する変異を“精緻(fine)”に絞り込み理解することが重要とされる。

    そこで本総説では、因果的変異を統計的に推定するfine-mapping手法に関して解説する。単一変異の寄与のみを考慮した単純なモデルから、より複雑かつ近年のバイオバンク規模のデータに適用可能なモデルまでを概観すると共に、疾患解析への応用や機能ゲノミクス、実験的検証との関連に関しても触れる中で、GWASのその先(post-GWAS)の時代の解析に関して展望する。

Review Article
  • 山口 秀輝, 齋藤 裕
    2023 年 4 巻 1 号 p. 52-67
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/03
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    ここ数年、深層学習に基づく生物配列の解析技術が台頭してきている。本稿は、その中でも特に急速に発達しているタンパク質の言語モデル(protein language models: pLMs)に関する総説である。アカデミアはもとより巨大IT企業も研究参画するこの技術は、基盤となるモデル開発がすでに一段落し、多様な生物学的・工学的タスクに対する応用結果が続々と報告されるフェーズに入っている。本稿では、最近のpLMsで中心的に用いられるTransformerの内部機構や学習方法、pLMsが獲得した生物学的情報の解析といった基本的な事項の解説から始め、配列解析、タンパク質機能予測・機能改変、立体構造予測、そして大規模言語モデルによる機能性タンパク質配列生成まで、実験的検証事例を交え幅広いテーマを紹介する。最後に、今後のpLMs研究が迎えうる展開について、萌芽的結果を踏まえつつ考察したい。

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