Abstract
RNA-seqをはじめとするトランスクリプトーム解析は、細胞機能や疾患メカニズムの解明に不可欠な手法として急速に普及してきた。しかし、従来のRNA-seqでは組織内での細胞の局在といった空間情報が失われるため、組織レベルでの生命現象を包括的に理解することは困難であった。こうした課題を解決する手法として登場した空間トランスクリプトームは、遺伝子発現データに組織内の位置情報を付加することで、細胞間ネットワークや微小環境を空間的な視点から解析できる画期的な技術として確立しつつある。本稿では、空間トランスクリプトームの代表的な実験技術と解析手法を概説し、脳神経科学や腫瘍免疫学をはじめとする最新の応用事例を紹介する。
1.初めに
遺伝子発現の詳細な解析は細胞の機能理解や疾患メカニズムの解明に不可欠な要素である。特に、トランスクリプトーム解析は、細胞内でどの遺伝子がどの程度発現しているかを網羅的に捉える手法として、2000年後半以降発展してきた。RNA-seqに基づくトランスクリプトーム解析は、遺伝子発現を網羅的に計測できるため、細胞集団の多様性や稀少集団の存在を明らかにする上で革新的な手段として普及した[1, 2]。一方、従来のRNA-seqは複数の細胞が混在する組織などからRNAをまとめて抽出した平均化されたサンプル(バルク)の解析であり、細胞ごとの特徴を把握できず、組織中での多様な細胞集団の挙動を正確に知ることは困難であった。その後、マイクロ流体技術やバーコード技術などの先進的な実験手法と高感度な解析装置の進歩により、極微量のRNAを効率的に捕捉・増幅が可能となった。この成果により、1細胞ごとのトランスクリプトーム解析を可能にしたsingle-cell RNA-sequencing(scRNA-seq)[3]は腫瘍内のがん細胞のヘテロジェネイティ[4, 5]や免疫細胞群の分類[6]、血球細胞や神経細胞の多層的な細胞種同定[7, 8, 9]など、多様な分野で大きな進展をもたらしている。しかし、scRNA-seqでは組織からの細胞分離が必須であり、細胞が元々存在していた空間的配置や組織内での遺伝子発現パターンといった情報が失われる。scRNA-seqから空間構造を推定するアプローチ(例:SeuratのSpatial reconstruction, Tangram, BayesSpace[10])も提案されているが、実際の組織切片から得られる空間情報そのものを活用できる手法として注目されるのが空間トランスクリプトーム(Spatial Transcriptome)である。空間トランスクリプトームは、組織切片のまま遺伝子発現を可視化・空間的プロファイリングすることで、組織構造や微小環境と遺伝子発現の対応関係を直接解析可能にした技術である。遺伝子発現と組織構造を紐づけ、細胞間ネットワークや微小環境の詳細をより生体に近い形で理解が可能になった。ただし、空間トランスクリプトーム解析には検出感度や解像度の制限があるため、より解像度の高いscRNA-seqによる遺伝子発現解析と併用することで補完的に利用する研究が増えている[11, 12, 13]。本稿ではRNA-seqやscRNA-seqに次ぐ新たな手法となる空間トランスクリプトームに焦点を当て、解析手法や空間トランスクリプトーム解析を使用した最新の知見について紹介する。
2.空間トランスクリプトームの歴史
2.1 トランスクリプトーム解析の発展
トランスクリプトーム解析は、細胞内で転写される全てのRNAの解析を通じ、どの程度遺伝子が発現しているかを網羅的に調べる手法である。異なる条件(たとえば病気の状態と健康な状態)で、どの遺伝子の発現が変わっているのか、細胞の分化段階でどのような遺伝子発現の変動があるのかを明らかにする重要な分野である[14, 15]。トランスクリプトーム解析の興隆は、2008年に登場したRNA-seqをきっかけに網羅的かつ高感度に転写産物の検出が可能になったことから進歩を遂げた[1, 2, 16]。その結果、それまで同定されなかった新規転写産物の同定や遺伝子発現制御に関わる非コードRNAの発見など生物学的理解を大きく進展させた[17, 18]。
2.2 空間情報の必要性
RNA-seqでは解析対象の組織に存在する全ての細胞を平均化したサンプル(バルク)の遺伝子発現プロファイルとして解析を行う。そのため、個々の細胞の遺伝子発現を解析することは出来ない。一方、scRNA-seqでは実験技術や装置の発展により、1細胞ごとにトランスクリプトームの定量し、個々の細胞における遺伝子発現を解析することが可能になった。その結果、クラスタリング[19, 20]やCellRank[21]など、細胞の動態や分化の推定を組み合わせた手法により特定した細胞種ごとの遺伝子発現量の比較が行えるようになった。ただし、scRNA-seqにおいても1細胞レベルに組織を分離する影響で空間的配置や組織の形態が失われてしまうため、各細胞が組織のどこに位置しているのか、様々な細胞種の分布パターンや、注目する遺伝子の発現が組織内でどのように分布しているのかは直接的に捉えられない。scRNA-seqデータを用いた空間再構築手法によって、細胞間の関係を推定する試みも行われている[22]が、組織切片上の空間情報が失われることで、例えば、がん細胞が近接する免疫細胞に及ぼしている影響や、組織の発生過程でどの細胞がどのタイミングでどの場所に現れるか、またその配置が組織の形態や機能にどう影響するか、組織内での正確な細胞位置や遺伝子発現の分布の詳細な取得にはscRNA-seqでは限界がある。このような背景から、空間情報を含めてトランスクリプトームを計測する空間トランスクリプトームが開発された(表1)。
表1:RNA-seqから空間トランスクリプトーム技術の歴史
年 | 出来事 | 背景・意義 |
1990年代後半~2000年代初頭 | マイクロアレイから次世代シーケンサー(NGS)への移行 | 次世代シーケンサー(NGS)が登場し、より網羅的な遺伝子発現解析が可能になった。 |
2006~2008年 | RNA-seq手法の初期開発[2] | マイクロアレイよりも高感度で精度の高いトランスクリプトーム解析として注目を上げる。 |
2008~2009年 | RNA-seqの急速な普及と改良 | ヒトやマウス、酵母など様々な生物の研究に導入され、遺伝子発現解析の新たな標準手法となった。 |
2009~2011年 | Single-cell RNA-seq(scRNA-seq)の出現[3] | 細胞の不均質性を解析できるようになり、発生・疾患研究に革命をもたらした。 |
2014~2016年 | in situハイブリダイゼーション系及びバーコードキャプチャー法によるSpatial Transcriptome技術の登場[23, 24] | 組織切片上の遺伝子発現を高精度に解析する手法が示された。組織画像と遺伝子発現を統合して解析できる手法として注目を上げる。 |
2019年 | Slide-seqおよび10x Genomics Visiumの登場[26, 27] | Slide-seqはバーコード化ビーズを利用して高解像度の遺伝子発現マッピングを可能にした。また、10x GenomicsのVisiumは商用空間トランスクリプトーム解析を普及させる契機となった。 |
2021 | 改良型in situハイブリダイゼーション系(MERSCOPE)[53]及び改良型バーコードキャプチャー法(Stereo‑seq)[28]の登場 | MERFISHベースの商用in situプラットフォームと、500nm解像度の革新的キャプチャー技術が登場した。 |
2023 | Xenium[54]プラットフォームの登場 | seqFISHやMERFISHでは複数回ハイブリダイゼーションすることで遺伝子を検出していたが、バーコードプローブによって1ショットで最大5,000遺伝子を検出可能になった。 |
2024 | 商用プラットフォームVisiumの改良(Visium HD) | Visiumでは検出スポットが約55µm×55µmだったところを2µm×2µmにすることで単一細胞レベルに近い解像度で遺伝子発現を空間マッピング可能にした。 |
2.3 空間トランスクリプトーム技術の登場
空間トランスクリプトームという概念は、2016年にStåhlらが組織切片上で蛍光標識されたプローブを用いて転写産物を二次元的に再構築する手法[23]を「Spatial Transcriptomics」と発表したことで広く知られるようになった。空間トランスクリプトーム解析は細胞の位置情報や周囲の微小環境との関係を保持したまま組織切片上で直接遺伝子発現と位置情報の取得が可能である。細胞の局在と組織内での遺伝子発現パターンを実測値に基づいて解析が行える点がRNA-seqやscRNA-seqにはない利点と言える。
空間トランスクリプトームの実験手法としては、「組織内のRNAに対してin situハイブリダイゼーションを行う方式」と、「バーコードオリゴを用いてmRNAをキャプチャーし、その位置情報と紐づける方式」の2つに分類される(表2)。本セクションでは両者の概要と解析を行う上でのメリット・デメリットについて紹介する。
表2:空間トランスクリプトームの代表的な技術
| in situハイブリダイゼーション系 | バーコードキャプチャー系 |
代表的手法 | smFISH, MERFISH, seqFISH etc | Visium(10x), Slide-seq etc |
原理 | プローブとmRNAのハイブリダイゼーションによる可視化 | ビーズ・スライド上のバーコードによるmRNAのシーケンスベースな可視化 |
空間解像度 | 100~500nmスケール | 数十~数百µmのスケール |
網羅性(検出遺伝子数) | 研究対象のターゲット遺伝子のみ測定可能(通常は数十~数千) | RNA-seqに近い網羅性(全転写産物を対象に解析可能) |
定量精度 | 高いシグナル・ノイズ比により精密な定量が可能だが、蛍光強度の飽和やプローブのハイブリダイゼーション効率に依存 | RNA-seqベースの定量により広いダイナミックレンジを持つが、mRNAの捕捉効率やシーケンス深度によるばらつきが影響する |
メリット | 単一分子レベルの空間情報が得られる 細胞内局在を正確に把握可能 | 多数の遺伝子を一度に網羅的に解析可能 RNA-seqに近い定量精度と幅広い適用性 |
デメリット | 大規模ターゲット解析の場合、ターゲット数が多い場合、プローブ設計やシグナル検出が技術的・コスト面で難しくなる 非モデル生物ではプローブの設計が実験ごとに作製を行う必要がある | 空間解像度はビーズ直径やアレイ間隔に制限され、バーコードのキャプチャー効率や組織透過性によるバイアスが生じる |
2.3.1 in situハイブリダイゼーション系
in situハイブリダイゼーション方式では、組織切片上で蛍光標識されたプローブを用いてRNAの局在を可視化し、細胞や細胞内における転写産物の情報を詳細に捉える手法である。そのため、研究の目的が組織における細胞分布パターンと遺伝子発現パターンの精密な可視化にある場合にはin situハイブリダイゼーション系が適している。in situハイブリダイゼーション系の代表例としては、Sequential Fluorescence In Situ Hybridization(seqFISH)[24]とMultiplexed Error-Robust Fluorescence In Situ Hybridization(MERFISH)[25]が挙げられる。seqFISHは遺伝子ごとに異なる蛍光プローブを準備し、各ラウンドのイメージング後にシグナルを消去しながら繰り返しハイブリダイゼーションを行う方法である。繰り返しの工程を踏むことで多数の遺伝子を測定でき、細胞レベルの遺伝子発現データを空間座標と紐づけられる点に大きな利点がある。MERFISHは、大量のバーコード化プローブを用いて細胞内のRNAとハイブリダイゼーションを行い、複数回のイメージングを組み合わせることで多数の遺伝子を同時に可視化する手法として知られる。このアプローチでは、高い特異性と正確性を保ちながら、サブセルレベルの分解能で遺伝子発現の空間分布を明確に捉えることができる。ただし、これらの手法は複数回のハイブリダイゼーションや高度な蛍光顕微鏡を用いる必要があり、実験系の構築・維持コストが高い点や検出できる遺伝子数が数千程度と網羅的な解析が難しい点が課題として挙げられる。こうした課題を解消するため、10x Genomicsが開発したXeniumやVizgenが提供するMERSCOPEでは前述した問題点に関して蛍光シグナルの増強やワークフロー自動化を行うことで高感度化と自動化を推し進めており、技術向上が見られる。これら商用プラットフォームの登場により、実験系の構築が容易になりつつある。
2.3.2 バーコードキャプチャー系
バーコードキャプチャー方式は、組織切片上に空間バーコードを持つオリゴヌクレオチドを固定し、そこに存在するmRNAをキャプチャーする手法として遺伝子発現を組織での細胞分布と対応させる技術である。バーコードが印刷されたスライド上に組織切片を載せ、そこで部分的にmRNAをキャプチャーして回収するため、各スポットのバーコードを介して空間情報と遺伝子情報が結びつくという仕組みである。組織切片のmRNAをキャプチャーして回収するため、組織全体の遺伝子発現を網羅的に解析できる点がin situハイブリダイゼーション方式には無い利点と言える。組織スケールで網羅的かつ定量的な解析を行う場合にはバーコードキャプチャー系が適している。バーコードキャプチャー系の技術として広く普及している実験手法にはSlide-seq[26]と10x Genomics社のVisium[27]が挙げられる。プロトコルが比較的単純で、商用キットや解析ソフトウェアが整備されており、空間トランスクリプトーム解析の導入を容易にしたという点は大きな功績である。一方で、スポットサイズが比較的大きいため、複数細胞のmRNAが混在し1細胞の解像度に届かない点、スポット単位でのみ情報が得られることから、in situハイブリダイゼーション系と比較して発現遺伝子の検出感度は劣る。バーコードキャプチャー系での解像度と検出感度を高める試みとして、Stereo-seq[28]やVisium HD[29]では各スポットにRNAをキャプチャーするプローブを改善し、従来よりも高密度に配置することで1細胞の解像度かつmRNAのキャプチャー効率の改善にも寄与している。これらの技術進歩によってバーコードキャプチャー系でも1細胞に近い解像度で網羅的な解析が実現している。
2.4 データベースの活用
現在ではDeepSpaceDB[30]およびSpatialDB[31]など空間トランスクリプトームのデータベースが存在し、プラットフォームや組織を跨いだ大規模メタ解析や機械学習手法の開発へと応用されている。一例としては空間トランスクリプトーム解析の精度向上のために開発されたSTAGATEと呼ばれる深層学習モデル[32]が挙げられる。このモデルのトレーニングには、DeepSpaceDBやSpatialDBといった公開データベースから収集した数千枚の空間トランスクリプトームデータが活用されており、認識する画像スポットの識別精度を高めるのに大きく寄与している。この成果は、異なる条件下でも安定して組織構造を再構築できることを意味し、将来的には3次元的な組織での遺伝子発現マップの作成や、がん微小環境の領域ごとに異なる治療標的を探索する研究へと応用が期待される。
3.解析に用いるデータの種類と解析の流れ
3.1 データの種類
空間トランスクリプトーム解析では、遺伝子発現情報と空間座標情報を組み合わせたデータが取得される。これらのデータは、解析プラットフォームや手法によって形式が異なるが、一般的には以下のデータセットが含まれている。
(i)発現行列(Gene Expression Matrix)
発現行列は、遺伝子発現量を表形式でまとめたもので、空間トランスクリプトーム解析の中核となるデータである。行は遺伝子、列は空間的な単位(スポット、ピクセル)を表し、各セルには対応する遺伝子の発現量が数値で格納される。なお、ここで用いられる空間的な単位は、1細胞ごとに計測されるのではなく、複数の細胞が含まれるスポット単位となるため、1細胞単位の解析に比べて分解能がやや低下することに注意が必要だ。遺伝子発現量の数値は、リードカウント(Read Count)、正規化されたリードカウント(Normalized Read Count)、TPM(Transcripts Per Million)、FPKM/RPKM(Fragments/Reads Per Kilobase Million)など、様々な形式で表現される。解析では、この行列に対して正規化処理や次元圧縮、クラスタリング、空間的変動遺伝子の同定などが実施される。
(ii)空間座標情報(Spatial Coordinates)
空間座標情報は、各測定単位(in situハイブリダイゼーション系では分子または細胞、バーコードキャプチャー系ではスポットやピクセル)の位置を示すデータである。通常は二次元座標(x, y)として与えられ、各測定単位の遺伝子発現情報と1対1に対応付けられる。この座標を用いることで、遺伝子発現を空間的文脈の中で解析でき、特定遺伝子が組織の特定領域に集積しているか、もしくは空間的に分散しているかなどを統計的に評価することが可能となる。空間的な情報を活用したクラスタリング[10, 33]や組織や臓器の中で、その場所によって発現が変わる遺伝子(spatially variable genes)の同定[34]を行う際に、この座標情報が必須となる。
(iii)画像データ(Imaging Data)
画像データは、組織の形態や細胞配置を観察するために、HE(ヘマトキシリン・エオシン染色)や蛍光免疫染色(Immunofluorescence)によって撮影された組織切片画像が用いられる。発現データを画像データに重ね合わせることで、組織の病理学的特徴と分子生物学的な特性を統合的に理解することが可能となる。画像データは通常TIFFやPNG形式で提供されることが多く、解析ソフトウェアで直接読み込み可視化に用いることができる。
3.2 データの取得から解析までの流れ
Single-cell RNA-seq(scRNA-seq)と空間トランスクリプトーム解析は、データの前処理や解析手順において共通する部分が多いものの、最大の違いは「空間情報の有無」と「解像度」にある。本セクションでは、空間バーコードを用いたキャプチャー方式を採用している10x Genomics社のVisium Spatial Gene Expressionを例に、一般的な解析ワークフローを概説する[35]。Visiumの解析ワークフローは、まず空間バーコードが付与されたガラススライド上に組織切片を載せ、各スポットにおいてmRNAを捕捉することで開始される。次に、捕捉されたmRNAを逆転写しcDNAを合成、さらにライブラリ調製を行い、次世代シーケンス(NGS)用のデータとして準備する(図1)。その後、NGSプラットフォームを用いてシーケンスを実施し、空間バーコード情報が付与されたリードデータを取得する。シーケンス後のデータ処理には、10x Genomicsが提供するSpace Rangerを用いる。このツールはLinux環境上で動作し、シーケンスデータの参照ゲノムへのマッピング、空間バーコード情報の統合、遺伝子発現カウントマトリクスの作成を一括して実行する。Space Rangerは組織切片の画像データと遺伝子発現情報を統合し、組織構造に基づいた空間的な発現解析も可能である[36]。
3.3 Visiumによる解析工程と使用されるコードの解説
データ解析の実行は、主にSpace Rangerの「spaceranger count」というコマンドによって行われる。このコマンドは実験で取得されたFASTQファイル、組織画像、リファレンスとなる遺伝子発現情報、そしてVisiumスライドに関する情報を入力として受け取り、一連の処理を実行して各キャプチャースポットの遺伝子発現マトリックスを生成する。出力結果は、信頼性の高いデータのみが抽出された遺伝子発現マトリックス(filtered_feature_bc_matrix)、組織画像、スポット座標情報、さらに解析レポートやJSONファイルなどが出力される。これらのデータを使用して遺伝子発現を組織画像にマッピングが可能になる(図2)ほか、scRNA-seq解析でも使用されるRのSeuratやPythonのScanpyにより高度なクラスタリングや発現変動解析解析を実施することも可能である[23, 37, 38]。図2のコードは、Pythonを用いて空間トランスクリプトームデータの前処理を実施する一連の流れの例を示している。まず、必要なライブラリ(pandas、numpy、scanpy、matplotlib、skmiscなど)をインストール・インポートし、解析環境を整える。次に、解析対象のデータIDを設定し、指定ディレクトリからScanpyのread_visium関数を使ってVisiumデータ(遺伝子発現マトリックス)を読み込む。読み込んだデータに対して、遺伝子名の重複を排除し、Seurat v3の手法で変動の大きい上位3,000遺伝子を抽出、さらに各キャプチャースポットの総発現量を10,000に正規化し、対数変換を適用してデータのばらつきを安定化させる。最後に、別途読み込んだ注釈情報をデータに統合することで、組織画像に遺伝子情報を反映(アノテーション)している。クラスタリング解析や発現変動解析などの二次解析について本稿では省略するが、各々の研究に応じて取り組んで頂きたい。
また、SeuratやScanpyに加え、Loupe Browserと呼ばれるGUIで解析可能なツールも提供されており、コマンドラインによる解析に慣れない人でも空間トランスクリプトーム解析が気軽に行えるプラットフォームが提供されている[39](図3)。
4.空間トランスクリプトームが導いた生物学的発見
空間トランスクリプトーム解析は、組織や臓器の中で細胞がどのように配置され、細胞の局在と遺伝子発現パターンがどのように分布しているかという「空間情報」を加味できるため、最初に技術として使用された脳神経科学分野だけでなく腫瘍免疫など多岐にわたる分野で応用されている。本セクションにおいては主に空間トランスクリプトーム解析を行っている神経科学および腫瘍免疫学を例に、研究事例について簡単ではあるが紹介したい。
4.1 神経科学
脳は非常に複雑な構造を持ち、各領域で異なる機能や細胞タイプが存在する。そのため脳の各機能領域での細胞群、及び神経回路や細胞間の関係を三次元的に理解することが重要となる。従来のscRNA-seq等を用いた解析方法では個々の細胞の遺伝子発現プロファイルは取得できるが、細胞間の空間的な配置が失われるため脳構造の空間情報を考慮して解析することが困難であった。空間トランスクリプトームの登場により脳の主要領域(例:大脳皮質、海馬、小脳など)およびそれらのサブ構造の形態といった空間情報と遺伝子発現プロファイルを統合した解析が進められている。in situハイブリダイゼーション系(例:MERFISH)は細胞内のRNAを1分子レベルで可視化することで視床下部前視床野や一次運動野など特定領域における細胞集団が実は複数のサブタイプに分かれていること[40, 41]や、育児や攻撃、求愛といった特定の行動と、行動によって活性化される細胞群の分布を明らかにした[42]。一方、Visiumを代表とするバーコードキャプチャー法は、ガラススライド上のバーコード付きスポットを利用し、海馬、大脳皮質、視床下部など広範な脳領域の網羅的なRNA発現プロファイルを取得し、睡眠不足やストレスといった外的要因が各領域に及ぼす影響が定量的に明らかになった[43, 44]。さらには神経回路の組織学的な理解や領域ごとの機能解明を行うため、空間トランスクリプトーム技術を用いた基盤リソース(脳アトラス)の作成が進められている[45, 46, 47, 48, 49]。
4.2 腫瘍免疫学
腫瘍免疫学における空間トランスクリプトーム解析を用いた研究では、腫瘍内の免疫細胞とがん細胞の空間的配置を高精度に可視化することで、免疫逃避メカニズムの解明に大きく貢献している。例えば、in situハイブリダイゼーション系のMERFISHを用いた卵巣がん解析では、高解像度な空間トランスクリプトーム解析によって、約2.6万〜数百万の細胞の遺伝子発現を単一細胞レベルで腫瘍組織へとマッピングし、がん細胞中の免疫逃避と関係する約200個の遺伝子群を同定した。さらに、がん細胞におけるPTPN1およびACTR8の発現が腫瘍に浸潤するリンパ球による細胞傷害感受性を制御する主要因子であることを明らかにした[50]。一方、バーコードキャプチャー法による解析を皮膚扁平上皮癌に適用した研究では、組織全体の遺伝子発現マップから腫瘍前縁(リーディングエッジ)にT細胞やマクロファージが濃集する領域を同定し、その領域で腫瘍細胞がPDL1やCTLA4を高発現して免疫抑制ネットワークを形成していることを明らかにした[51]。これらの成果は、腫瘍微小環境での免疫細胞が集積する領域と腫瘍細胞が免疫逃避し、免疫細胞が少ない領域が生じるメカニズムの解明や免疫チェックポイント阻害剤の効果予測、さらには新規遺伝子標的治療の開発へとつながる重要な知見を提供している。
5.最後に
空間トランスクリプトーム技術はこの数年で飛躍的に発展し、解像度の向上とスループットの向上を遂げている。今現在も技術開発が進んでおり、より手軽に空間プロファイリングが可能になりつつある。今後は、これら様々なプラットフォームを統合的に活用することで、マルチスケールでの解析が進むことが期待される。
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著者略歴
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黒木 心和 横浜市立大学理学部理学科修了。2024年度に同大学大学院医学研究科に進学し、免疫細胞の運命決定を司るエピジェネティック制御の解明に取り組んでいる。Wet出身の研究者によるDry解析の重要性を感じ、Bioinformaticsを開始する。WetとDry両方の視点を持ち合わせた研究ができる研究者を目指し、現在研究に取り組んでいる。 |
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是枝 達也 名古屋大学大学院生命農学研究科博士前期課程修了。大学院で生命科学を学んだ後、ITエンジニアとして就職。生命科学と情報学の間をとってバイオインフォマティクスによる研究を開始した。薬剤刺激による細胞遺伝子シグネチャ解析といったトランスクリプトーム解析を専門とする。 ホームページ:https://www.linkedin.com/in/tkoreeda/ |